表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪役令嬢は攻略対象の愛から逃れられない  作者: 葵川 真衣


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

16/60

16.最善策


 クロヴィスは、レオンスの親しい友人である。

 無口で冷ややかな印象だが、浮ついたところがなく信頼のおける人物だった。

 妹は彼を怖がり、苦手に思っている。だからこそ、適任だった。


「クロヴィス、君に頼みがあるんだ」


 深刻な表情で相談を持ちかけるレオンスに対し、クロヴィスは怪訝な顔をした。


「なんだ? また妹の自慢話を僕に聞かせる気か。確かに君の妹は美しかった。ただ少し顔色が良くない。体調不良なのでは?」

「妹は健康だよ」

「ならいいが。この間、足下がふらついていたし、心配していた」

 

 シャルロットはクロヴィスに怯え、青ざめていたのだ。


「妹の自慢話をするのではないのなら、なんだ?」


 レオンスは唇を開いた。


「君に妹と婚約してもらいたいんだ、クロヴィス」


 彼はさらに不審げにする。


「何の冗談だ?」

「真剣に頼んでいる」

「君は妹を誰にもやりたくないと話していなかったか?」

「誰にもやりたくなんてないさ。だから婚約してもらいたい。オレが妹と結婚するまでの間の繋ぎとして」


「なんだって?」

「オレが妹を手に入れるまで時間が必要だ。今父に話しても、反対されるだろうから、父に認めてもらい、妹がオレを受け入れられるようになるまでの数年間、悪い虫がつかないように、君に虫よけになってもらいたいんだ」

「シスコンだと思っていたが……妹と本気で結婚する気なのか……」


 レオンスは首肯する。


「オレたちは実の兄妹ではないし可能だ。他の男になんて渡せない。この間は王太子が家にやってきたし、このままだと何が起きるか……。取り返しのつかないことになる前に、妹を守りたいんだ。だから時期がくるまで、君に婚約してもらいたくてね」

「僕は誰とも結婚する気がないんだが」

「そんな君だから頼んでいる」


 クロヴィスは強すぎる魔力を秘めていて、それは心身を蝕むほどのもので、暴走する危険性を孕んでいる。

 彼は自身の血を残す気がなく、家庭を持つことを諦め、人に対して心を閉ざしている。

 真面目なクロヴィスが妹に何かする心配はない。シャルロットも彼を恐れているし、妹の婚約相手として、これほどうってつけの人物はいなかった。


「婚約し、数年後、妹をこっぴどく振ってくれ」


 クロヴィスは大きく溜息を吐き出した。


「レオンス、落ち着け。君は少し……いや大分おかしいぞ? 妹の元婚約者を罵っていただろう。最低な男だと」

「ああ、あれは最低で卑劣な、害虫以下の男だったよ」

「ならなぜ妹を振るようにと?」

「父を説得しやすくなるからだ」


 婚約解消となれば、シャルロットが傷心だと父は思うだろう。そこで家族として見守ってきた自分が生涯守ると話せば、父も結婚を賛成してくれるはずだ。

 クロヴィス相手なら、妹は婚約破棄となっても心に傷を負うことはない。

 

 もちろん、レオンスは誰もが認める立派な男となり、シャルロットの心も自分に向けさせるつもりだ。


「一生に一度の頼みだ」


 クロヴィスは心底呆れたといったような顔をした。


「時間を置いて冷静になったほうがいい、レオンス」

「オレは冷静だよ」


 熟考した末の、最善案だった。



 

※※※※※




 家にまた殺人鬼が来ている。シャルロットは、クロヴィスの馬車が屋敷に入って来るのを目撃し、寒気を覚えた。

 

 しかしレオンスの部屋で、クロヴィスは兄と会っていた。自分と顔を合わせることはないだろう。


(よかった)

 

 胸を撫でおろしたが、廊下を歩いているとき、ちょうど兄の部屋から出てきたクロヴィスと鉢合わせてしまった。

 ぴしっと凍り付いてしまう。


 クロヴィスはアクアグレイの瞳でシャルロットを捉えた。胃が引き攣れながら、シャルロットは、なんとか喉から声を絞り出した。


「い、いらしていたのですね、クロヴィス様。こんにちは」

「ああ。もう帰るところだが」


 彼はシャルロットを無表情で眺める。


「君は体調が悪いのでは?」

「え……?」


 なぜか心配げに見られ、シャルロットはまごつく。


「いえ……体調は良好です」

「そうか」


 彼は兄とともに、階段を降りて行く。シャルロットは自室に戻り、呼吸を整えた。


(心臓が止まるかと思った……!)


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ