行間 月執と姫川 RE:
私、嘘付きだから…。
月執様。お聞きしても宜しいですか?と姫川は控え室に入るなり、そう問うた。
「はい?何でしょう?」
月執は振り返る事なく云う。
「渋澤様の【咎】の能力が効かない様に見えたのですが…。」
あぁ。あれ。と欠伸をしながら返す。
「うぅん。何て云えば良いかな…。例えば喉が乾いたとするでしょ?」
「ソレはどう云う事なのでしょう?」
まぁ。良いから聞いてよ。と月執は云う。そして…言葉を並べていく。
「水が飲みたいとして水を飲む。その水が少ないから足りないと感じる。ソレなら気の済むまで飲ませれば良いでしょう?ソレだけ…。」
「ソレだけ?だって渋澤様の【咎】は生命力を奪い続けるのですよ?ソレなら…。」
ソコで姫川はハッとした表情を浮かべ。
「真逆…。月執様の生命力が無限だとでも云うおつもりですか?」
姫川は考える様な動作をして、あぁ…。その様な嘘を吐いていたのですね。と云った。
「違う、違う。」
と月執は左右に右手を振る。
「ただの体質だから。」
「体質?」
「そう。体質。私にも併存疾患があるからね…。」
「月執様も【不老】の併存疾患をお持ちなのですか?ソレなら…。月執様は【境地】へと至る器はお持ちでは無い…。」
姫川は嗤う。
「【境地】へと至る方は、合併症も併存疾患にもならないと聞いています。一つを極めてこその【境地】。真逆…。月執様の【咎】で【全ての嘘が真実になる】事は無いのでしょう?まぁ。その能力が本当だとして、【境地】へと至っているのなら話は別なのでしょうけれど…。」
「誰から聞いたの?【境地】へと至るのなら合併症も併存疾患も持てない事…。」
「一葉様ですよ。あの人は…。世界の在り方を識っておられるので…。」
「ソレが間違いだとは考えないの?」
「…。」
「私、【境地】へと至った人を一人だけ知っているんだけど…。【アマノ】って人。その人も【不老不死】だったけど??」
「【不老不死】?」
姫川はクスクスと嗤った。
「ソレは嘘ですよ。【不老不死】の特性を持つ人は存在しません。この世界の理に外れてます…。」
ふぅん。と月執は云う。そして…。
「信じなくても良いけどね。私、嘘付きだから…」
と続けた。




