不死者と異端者 ④
この世界では生きていられる。
月執は渋澤の肩に手を当て云った。
「な、何で?」
渋澤は月執を視て涙を流す。
渋澤の【咎】【HUGs】の能力は無意識に発動し、月執の肉体を生温かい光が包んでいく。
「私には何の【才能】も無かった。と云うよりも…。ある一つの【才能】が完全に欠落していた…。」
月執は自嘲気味に嗤う。
「私には漠然としていたけど夢があった。私の想像が産み出した世界を表現する事。何でも良かった…。音楽でも小説でも漫画でも動画でも…。でもね…。【努力する能力】が欠落していた私と【努力が出来る人】との差は、時が過ぎると開いていった…。」
月執は手を視る。
「夢を掴もうとしても手の平から零れ落ちていったの…。小さい頃は天から与えられた能力で何でも出来ると思ってた。そして…そんな想いを抱いた儘に、肉体だけが成長した。夢だけが膨らんでいくけど…ただ膨らむだけ…。夢は夢なんだと思い知った…。」
月執は空を視る。
「そんな私を周囲の人達は【怠慢】だと云った。努力しなかったから叶わなかったと遠回しに云う。悔しかった。得体の知れない【怒りの感情】に飲み込まれ、気付くと【鬱病の症状】が出た。繰り返す【暴飲暴食】、身体はソレに慣れて…。そんな私は周囲と距離を置くようになった。子供の儘の私を置いて周囲の人間は大人になっていった。【羨ましかったし、妬ましかった。】ソレでもね…。【努力する事が出来なかったの。】」
月執は渋澤を視る。
「ソレでも…夢だけは膨らんだ。【欲望】もそうだった…。私は楽して稼げると本気で思っていた。【欲を強く願えば願う程に真実が私を責め立てた。】悪循環の始まり…。誰かに認められたかったのか…。私は【嘘】を吐いていった。承認欲求が高くなっていたとも思う。【私は幸せ】なんだと嘘を吐いた。嘘を一つ吐くと、その嘘を隠す為に、また嘘を吐く。そんな私に嫌気がさして…。私はナイフで幾度も自分を傷付けた。【自傷行為に快感】を覚えた。私は悲劇のヒロインを演じていたんだろうね。そんな私はその後も【生まれ持った能力】だけで成功すると本気で信じていた。【傲慢】だったな…。」
ソレでも…。そう云いかけた月執は…。
「そんな私でも…。この世界では生きていられる。」
と云った。




