不死者と異端者 ③
受け入れてよ。本当の貴方を…。
「ち…。違っ…。わ…。私は…。」
渋澤は狼狽している。言葉の通りなのかも知れない。狼狽。狼と狽は中国の伝説に登場する動物が由来。【狼】は前足が長く後ろ足が短い動物。そして…。【狽】は前足が短く後ろ足が長い動物。この二匹は、互いに寄り添わないと歩けない為、離れてしまうと動けなくなり慌てふためく…。その様子から【狼狽】と云う言葉が生まれた…。
そして…。
渋澤も、そうだったのだろう。母親と二人で寄り添い生きてきて、その母親を失ったから心の均衡が崩れている…。
「【咎】は、その人の本質を映し出す鏡の様なモノ…。貴方の【咎】は貴方から【死】を遠ざけている…。近付くモノの生命力を取り込むのでしょう?」
月執は渋澤を視る。
「そして…貴方の併存疾患は…。あぁ。虚人化の症状の一つ。【不死性】を発症しているのね…。此方も…。やっぱり貴方から【死】を遠ざけている。」
月執は渋澤との距離を詰めていく。
「それなのに…。貴方は認めてはいない。【咎】との対話を拒んでいるの?そんなに自分を知る事が怖い?」
「近付かないで…。」
渋澤は何かを拒絶するかの様に…。
首を横に振る。
「貴方の【咎】が視てみたい…。だから受け入れてよ。本当の貴方を…。そうしないと【咎】の完全解放出来ないでしょ?」
月執は渋澤の半径二メートル範囲の中に踏み込んでいき、言葉を重ねていった。




