不死者と異端者 ②
死ねないんです。私…。
渋澤は過去を語った。過ぎ去りし日の記憶を言語化し、月執に聞かせた。誰でも良かったのかも知れない。ただ心の奥底にある【何か】を解き放ちたかったのだろう。
父親が亡くなった事。ソレを切っ掛けに母親が若年性の認知症になった事。生活が困窮していった事。無理心中しようとして自分だけが生き残った事。
「母親の首を絞めました。そして…後を追う為に私は自分の首筋にカッターを押し当て、引きました。温かい血が噴き出たんです…。でも…死ねなかった…。」
渋澤は泣き崩れる。その様子を視ていた月執は優しく声を掛けた。
「そう。辛かったね。」
月執は言葉を一度区切った。それからユックリと渋澤に近付いていく。そして…。貴方の【咎】の能力を教えてくれる?と続けた。
渋澤の瞳が揺れ動いた。
「私の能力は…。【HUGs】」
月執が近付く度に渋澤は後退していく。
「私の半径二メートルに近付いた人の生命力を吸い取るみたいなんです。だから…。私に近付く人は…。あ、あと…。」
渋澤は涙を浮かべる。
「併存疾患もある様で…。死ねないんです。私…。」
月執は言葉を聞きながらも渋澤へと寄り添う様に近付いていく。
「お願いします。近付かないで下さい。もう誰も殺したくないんです…。」
「私なら大丈夫だから…。」
月執は柔らかく微笑み…。
「それよりも…。本当は…。母親の後を追う時…。死ねなかったんじゃなくて…。死にたくなかったんじゃないの?」
と渋澤に訊いた。




