泥中の華【零陸参】、怨嗟渦巻き沈んでいく ①
神仏の力を得られる…。
涼宮の足元の地面が泥化していった。泥々とした地面には柔らかな草が浮かぶ。花茎は葉腋から出て、葉よりも高く突き出し、巨大な五輪の華が涼宮を囲む様に咲いた。華は輪生状。色は紅紫色。白色。濃い赤。そして…。其々(それぞれ)の華の中央には…。
【華蓮】らしきモノがいた。
涼宮の瞳孔が開き、嗚咽が漏れる。
五人の【華蓮】の姿の異常性に、観客の眼は奪われていった。奇しくもソレは先程、十返の【咎】【グラッジ】が魅せた幻覚の様であった。
肉体内は細菌に依るガスで膨張し、白く膨らみ、瞳は白濁とし皮膚が剥がれ、その肉体はぶよぶよと蠢いている。そして…。五人の【華蓮】は其々言葉を紡いだ。制御されていない【咎】は最大火力で無遠慮に解き放たれる。
【淤泥不染】
【一茎一花】
【花果同時】
【一花多果】
【中虚外直】
涼宮の精神は壊れかけては【淤泥不染】の状態異常回復能力で正常へと戻されていく。【一花多果】の能力で炎。水。風。土。光。の魔法が同時に放たれる。制御されていない能力は涼宮の肉体に傷を付けるのだが…。【花果同時】の完全回復能力で瞬時に回復されていく。
【一茎一花】
蓮の華は、一つの茎に対し一つの華を咲かせる。その様は自身が此の世に唯一の存在である事を示している。本来ならば【華蓮】は神々しい姿で顕現されるのだが、【華蓮】は溺死体を思わせる姿で顕現されているのである。
【中虚外直】
蓮の茎は固く真っ直ぐに伸びているのだが、中は蓮根の様に空洞となっている。その様子から自我や欲を無にして、真っ直ぐに悟りの境地へと向かう様を示す。 【華蓮 境地】の本来の能力であるのならば神仏の力を得られる筈なのだが…。能力は暴走をしていた。涼宮の背中から数本の腕が出ては消え、消えては出る。顔の側面からも顔が出ては消え、消えては出ていく。
制御されていない凄まじい力の奔流が其処には在った。その力の奔流は十返の肉体を囚え、身動きを奪ったのである。




