泥中の華、怨嗟渦巻き沈んでいく ⑦
汝、己を知れ
《承認されました。》
涼宮の娘の聲に似た聲。その聲は涼宮の肉体を優しく包む。
次に異変に気付いたのは…。
胎天地心教の教祖、四方堂一葉だった。四方堂は声を、言葉を零す。
「【境地】に手を伸ばしたのかな?」
その言葉を聞き…
姫川は無邪気な笑顔で問う。
「私【境地】へと至った方を見た事が無いのですが…。涼宮様は【境地】へと至ったのですか?もし、そうだとしても私には涼宮様が【境地】に至る器を持っている様には見えませんけれども…。」
「あぁ。【境地】に至るだけなら器は関係無いんだよ。」
「関係無い?どういう事です?」
「【境地】とは、その人間が本来持つ【咎】の能力を最大限に引き出す事。でもね。有り余る力は身を滅ぼすだけなんだよ…。器が無いのなら有り余る力が溢れ出し、器に収まらなかった【咎】の能力は原型を保てずに暴走するんだ。そして…咎人の生命を奪う。」
姫川の肉体が歓喜で小刻みに震えた。
「【汝、己を知れ】って事さ。己を知らぬモノに己の能力の本質は理解出来ないからね。だけど…ソレが何よりも難しい。僕も僕自身を探してるんだよ。ずっとね…。」
四方堂はモニターから視軸をずらし窓の外を視た。太陽の光も届かぬ程に空を覆う光化学スモッグが其処にはあった。




