泥中の華、怨嗟渦巻き沈んでいく ④
その扉は開かれた…。
「まだ私は病状進行Ⅱだから蓮華の五徳の内の三つの徳しか使えないけど…。ソレでも…。」
涼宮は冷たい瞳で十返を見据えた。
そして…
「私の娘を殺した子供を育てた貴方の生命には手が届く。」
と云った。
「巫山戯るな…。巫山戯るな。私があんたの娘を殺したわけじゃないのに…。血の繋がりだけで殺されるのは理不尽よ…。私は何も悪く無い…。」
十返は肉体を微かに震わせている…。
そんな十返を見据え、涼宮は淡々と言葉を紡いだ。
「貴方が育てたのでしょう?貴方が、その子を導いていたのでしょう?血の繋がりは関係無いの…。子供は貴方の背中を見て育ったのよ。子は親の鏡。」
十返の胎内に様々な想いが渦巻く。怨恨。怨嗟。遺恨。怨念。宿怨。積怨。旧怨。その想いは形を成し、十返の深淵に沈む【何か】が産み堕とされる。
《病状進行します。【子宮に沈める】がステージIVに到達致しました。》
ははっ。と乾いた嗤いが十返から漏れた。そして…ソレは軈て狂気に満ちた嗤いになった。涼宮は、そんな十返の様子を訝しげに観察している。
「やっぱり私は悪くなかった…。病状進行したわ。ソレって神様が赦してくれたって事でしょ?」
十返は一変して…。
落ち着きのある声を響かせた。
【子宮に沈める…。】
闘技場の石畳が液状化する。其処から白い足が二本生えてきた。足と足の間には観音開きの扉が現れる。その扉には粘液の纏わりつく曼珠沙華が絡み付いていた。ギギギ。と扉は錆びた金属の音を立て…。
その扉は開かれた…。




