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泥中の華、怨嗟渦巻き沈んでいく ③


 蓮華の五徳って知ってる?


 「貴方、蓮華の五徳って知ってる?蓮の華には五つの特徴があるの…。この蓮華の五徳は極楽へ生まれゆく人の心を現してるのよ。」


 涼宮の廻りに咲く蓮の華が一輪開く。


 「淤泥不染おでいふぜんの徳。泥の中に咲いても、蓮の華は泥に染まらず、綺麗な華を咲かせる。だから貴方の精神汚染も御仕舞い…。完全な状態異常回復だから…。」


 白光が辺りを照らしていく。そして…また蓮の華が一輪開く。


 「一花多果いっかたかの徳。蓮の華は一つの華に多くの実を付ける。私のは威力は余り無いけれど…。五種類の属性の魔法を素早く放てる。」


 炎。水。風。土。光。五つの魔法が蓮の華から発動した。


 「何よソレ…。反則でしょ…。」


 十返は水と土の魔法をかわすが残りの三属性の魔法を肉体へと受けた。炎で皮膚は焦げ、風で肉は切れた。そして…光で視界は奪われ、心に沈殿する負の感情が少し浄化されていく。


 「畜生…。私が何をしたって云うのよ。」


 十返は【咎】の名を産み落とした。


 「【子宮に沈める】」


 涼宮の肉体に重力が伸し掛かかった。重力の影響で体液が下へと瞬時に移動する。一時的に貧血の症状に見舞われ、目眩でグラリと肉体が揺れた。


 「貴方が認識する状態異常と魔法に依る物理的な影響は違うみたいね…。どう?最悪な気分になるでしょ?」


 涼宮は膝から崩れ落ち、両の手を地面に落とす。ソレを視ると十返は傍へと近付き涼宮の右の頬へと蹴りを入れた。口の中が裂け錆びた鉄の味が広がっていく。動けない涼宮に十返は幾度となく打撃を加え続けた。


 「花果同時かかどうじの徳。蓮の華は一度に開き、咲くのと同時に実が出来る。ソレは命を繋ぐのと同意義なの。」


 蓮の華が一輪華開くと、十返が与えた損傷ダメージが瞬時に回復していく。


 「何なのよ…。何なのよあんた…。」


 十返の心の奥底から湧き上がる【得体の知れないモノ】を視た時の情感。その問いに涼宮は冷静に言葉を紡いだ。


 「子供を愛する、一人の母親…。」

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