人を喰らう死体と火中の蛾 ⑤
厭だ…。
煌々と輝く炎の中で白鷺はユラユラと左右に舞っていた。灰谷が投げる石が白鷺の肉体の右に左に打つかり、その度に血飛沫を舞い上がらせ、肉を抉っていった。ドゴッ。ドゴッと鈍い音が一定の律動を刻んでいる。
ソコに、グチャリと一際大きい音が産まれた。白鷺の頭上へと如月の遺体が落下した音だった。ゴキッと音がして白鷺の首は有り得ない方向へと折れた。祖父母の口元から生えている管は千切れ、酸素が漏れ出ていく。
「あ〜ぁ…。一酸化炭素中毒になる前に…。首の骨が折れたか。」
炎の壁は消失したのだが、ソレでも未だに熱気が辺りを支配していた。灰谷が白鷺の肉体を喰らおうと傍らに座った時だった…。
【ノー・サプライゼズ】
そう白鷺は呟いた。白鷺の身を包んでいた防火服が瞬時に修復していった。ソレと同時に灰谷は瞳を見開き、口をパクパクと開けては閉めてをくり返す。
ケラケラと白鷺の嗤い声が響いた。
「ありがとう。私に武器をくれて…。」
白鷺はユルリと立ち上がる。
「私の【咎】、【モス・イントゥ・フレイム】病状進行したみたい…。声が聴こえたの…。【合併症】だって…。【信仰の咎】も発症したみたい…。」
灰谷の顔が紅潮していく。その表情は疑問符を浮かべている様だった。
「どうして?って顔してるね。教えて欲しい?聞きたい?ねぇ…。聞きたい?」
またケラケラと嗤う。
「厭だ…。」
白鷺は真顔になった。
その口から深く冷たい声が漏れる。
「【モス・イントゥ・フレイム】」
瞬時に…。炎が…。灰谷と如月の肉体を彩り鮮やかに染めていった。皮膚が爛れ、皮下脂肪と肉が燃えていく。メラメラと炎が揺れて陽炎を創り出す。世界は輪郭を失い、彼の世と此の世の境界を曖昧にした。
白鷺真。
二十八歳。女性。
【堅固】の咎を発症。
咎名【モス・イントゥ・フレーム】
ステージIII。
合併症により…。
【信仰】の咎も発症。
咎名。【 ノー・サプライゼズ】
ステージ0
【モス・イントゥ・フレイム】
身体能力の向上(小)。自身を中心とした半径四メートルに炎の壁を創る。炎の最大火力400°C、その炎に耐えられる防火服を顕現可能。(ステージ0)
身体能力の向上(小)。自身を中心とした半径四メートルに炎の壁を創る。炎の最大火力900°C、その炎に耐えられる防火服を顕現可能。(ステージⅠ)
身体能力の向上(中)。自身を中心とした半径四メートルに炎の壁を創る。炎の最大火力1400°C、その炎に耐えられる防火服を顕現可能。(ステージⅡ)
身体能力の向上(大)。自身を中心とした半径四メートルに炎の壁を創る。炎の最大火力2000°C、炎に耐えられる防火服を顕現可能。防火服は神経細胞と融合、肉体が損傷しても、ある程度は修復可能。(ステージⅢ)
【ノー・サプライゼズ】
身体能力の向上(小)。任意の相手一人を一酸化炭素の膜に閉じ込める。(ステージ0)
攻撃力 A
防御力 SSS
精神力《攻》S
精神力《防》S
俊敏性 D
器用値 A
生命力 A
運命値 S




