過ぎ去りし日と現状③
異端。咎人。壺中の蟲。
世界に歪みが発生してから半年後。存外、人間の適応能力は侮れなかった。KARMAウィルスに感染した人々。感染しなかった人々。様々な症状を持つ人々。其々が歯車、或いはパズルピースの様に適応し、新しい世界の機能を創造していったのである。人々は己に適した独自のコミュニティを形成し、独自のルールで生活をしている。
月執は所謂、一匹狼であった。己のしたい事を己のしたい時にする。要は本能の儘に生きる事を選んだのである。一人で行動し、生き抜く事に何の支障も無く、何よりも鎖に繋がれる事を嫌った。規律。法律。道徳。其れ等は行動を制限する鎖の様なモノ。この様な世界になってしまったのなら態々(わざわざ)、自ら鎖に繋がれるのは自殺に等しい行為である。と、感じていたからだった。
では、何故。この過酷な世界で月執が何の不自由も無く、生き抜けているのかと云うと…。月執は異能力【咎】を持つペイシェントだからである。月執には自覚が無いのだが、月執の【咎】は何もかもが規格外であった。そんな月執は新しい世界でも異端的な存在として認知されていく事になる。
月執は後に【蠱】と呼ばれた。
ソレは月執が、とある噂に興味を持ったのが切っ掛けだ…。