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人を喰らう死体と火中の蛾 ④


 俺は武器となるモノを二つ持っているって事だよ。


 「だから何だって云うの。ソレが死なないからって何?ソレに何が出来るって云うの?死体なんだから私の【咎】で火葬されるだけじゃない。」


 白鷺は構わずに灰谷の方へとユックリと近付く。そんな白鷺へ灰谷は言葉を投下した。


 「あんたのは武器じゃない。防具って感じだな。射程距離は?移動速度は?俺の見立てだと射程距離四メートル。【咎】を発症している時、移動速度はソレが限界ってところだろ?…。」


 灰谷は白鷺を視る。白鷺は冷淡な視線を灰谷へと送っている。


 「だからって逃げ続けるつもり?確かに私は武器の様なモノは持っていないけど。だから何?貴方、近付けもしないでしょ?」


 「だから…。俺は武器となるモノを二つ持っているって事だよ。」


 灰谷は地面に拳を叩き付けた。ドガッと音がして地面は崩れる。そして…瓦礫を掴んだ。


 「俺の身体能力は【カンニバル・コープス】により異常な迄に増幅されている。だからさ…。コレを単純に投げるだけでも銃火器以上の殺傷能力になるんだ。」


 そう云って、瓦礫を放った。ゴウッと音を立てた瓦礫は尋常ならざる速度で白鷺の左腕をえぐった。激しい痛みで白鷺は本能的に瞳を閉じてしまう。飛散する肉片。舞い散る血液。白鷺の唇から漏れる叫び声。防火服は瞬時に修復を開始したのだが、白鷺の肉体迄は修復出来ない様だった。


 「殺してやる。」

 白鷺は感情を露わにし、殺意を込めた意思を灰谷へと示した。そして…。ある事に気付く…。


 「如月あいつは何処に行った?」


 灰谷は白鷺の頭上の方へ視線を移し…。ぶん投げといた。と云い…。


 「あんたなら知ってるだろ?火災現場での死因の原因は一酸化炭素中毒だよな?一酸化炭素は無色無臭…。本人も気付かない内に意識を失うんだろ?って事は…。あんたの酸素供給してるソレを壊せば俺の勝ちになるよな?」


 と続け。白鷺の頭部を覆う祖父母の顔を指差した。


 「俺の投げる石と上から迫る屍人しびと…。どっちがソレを壊せるか…。あんたはどっちだと思う?」


 「灰谷ぃぃぃ。貴様ぁぁぁぁぁあ。」

 白鷺の絶叫が木霊した。

 


 灰谷はいたに玲央れお

 二十八歳。男性。

 【希望】の咎を発症。

 咎名【カンニバル・コープス】

 ステージⅢ 末期。


 能力。身体能力の向上(特大)


 遺体を喰らう事に依り身体能力の向上。

 攻撃力、防御力の向上。(ステージ0)


 遺体を喰らう事に依り身体能力の向上。

 攻撃力、防御力、俊敏性、器用値の向上。

 (ステージⅠ)


 遺体を喰らう事に依り身体能力の向上。

 攻撃力、防御力、俊敏性、器用値、精神力《攻》、精神力《防》の向上。

 (ステージⅡ)


 遺体を喰らう事に依り身体能力の向上。

 攻撃力、防御力、俊敏性、器用値、精神力《攻》、精神力《防》の向上。

 直前に喰らった遺体に《生命》を分け与える事に依り、屍人としての使役が可能。

(ステージⅢ)


 攻撃力 SS

 防御力 SS

 精神力《攻》B

 精神力《防》B

 俊敏性 SS

 器用値 A

 生命力 A

 運命値 B

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