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行間 月執と姫川


 人を生き返らせる咎は存在しない様です。


 控え室にあるモニターを視ていた咎人達は各々が其々、様々な想いを抱いていた。


 月執は片山が西のギルドマスター九条くじょうそらの恋人を殺害した可能性が高いと考えていた。九条からの情報だけが判断材料である…。けれど候補の一人である事に違いは無かった。


 『でも…。好きで人を殺してる様には見えないんだよなぁ…。』


 月執はモニターに映る【所在無き風船】へと視軸をずらした。銀のロングウルフの髪が揺れている。凹凸のある肉体は艶かしく、色香の漂う容貌。彼女・・は現在、片山の左隣で肉体を絡ませる様に抱きついていた。


 『凄い、困った顔してるし…。』


 月執は背伸びをしながら欠伸をしている。その時だった。コツコツとドアのノック音が聴こえた。


 失礼します。と…。一礼をして入ってきたのは若い女性だった。 


 「姫川ひめかわ佳乃よしのと云います。月執様には現時点。【ディストピア】に依る恩恵は有りませんので、その説明をしに来ました。」


 「ディストピア?」


 「はい。胎天地心教に関係する者が必ず身に付けている【ディストピアの首輪】です。コレはわたくしの咎。【ディストピア】の能力の現れです。そして…この首輪を身に付けている者は個別にカスタマイズされた【制限】が強制されます。今回、片山様には必要有りませんでしたが…。例えば肉体を損傷しても、その箇所は殺し合いが終了すると同時に全治させたりも出来ます。勿論…。」


 姫川は無表情に月執を視た。


 「死んだ者を生き返らせる事は出来ません。胎天地心教は此れまで様々な調査、研究をしてきましたが【人を生き返らせる咎】は存在しない様です。」


 『嘘は吐いてないな…。』


 一度、間を開けると姫川は続ける。


 「ソレで…月執様はどうしますか?【ディストピアの首輪】が有れば、【制限】はあるものの今回の殺し合いでは有利になるとは想いますが…。」


 月執は即答する。


 「いや。必要無いです。首輪とか…。制限とか…。何モノにも縛られずに生きていたいんですよ。例え死ぬ事になっても…。」


 表情に変化が無い姫川の硝子玉の様な瞳は月執の姿を、ただ映し出している。其処には是も非も無い。


 「そうですか。承知しました。」


 また一礼をすると姫川は退出していく。


 『感情の無いビスクドールみたい…。自分を彼処まで律するの…。疲れないのかな…。私には無理無理。』

 と、月執は溜め息を吐いた。

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