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虚無的機械と空舞う風船 ②


 く落ち着いた聲が響いた。


 「この【とが】ってヤツ。面白いよな?自分でも気付かない心の奥深くにある【想い】が形を成すらしい。」


 此奴こいつなんだけど…。如月は召喚した腐敗している遺体の様な人間を指差した。


 「道島どうじま光星こうせいって奴なんだが…。俺の唯一の親友だったんだよ。いや…。親友と云うよりかは実験動物モルモットだったと云う方が正しいか…。」


 片山は侮蔑の表情を浮かべる。

 「貴方は何が云いたいのですか?」

 「要するにだ…。産まれ堕ちた時からコミュニケーション能力が欠落していた俺が実験動物モルモットとして扱えた唯一の人間が、此奴こいつだけだったって話だよ。御前にもせてやりたかったよ。此奴こいつが日に日に衰弱していく様をな…。」


 如月は指揮を執るかの様に右手・・を振う。その動きに合わせ道島どうじまが片山を襲った。


 「ちゃんと避けろよ。死に物狂いでさ。此奴こいつの攻撃はかすってもアウト…。じゃないと御前…。」


 片山は俊敏に攻撃をかわしていく、片山の意識が道島へと集中する最中、如月は左手・・で指揮を執った。半身腐敗した馬が道島の反対から機敏な動きで体当たりを仕掛ける。片山は半身腐敗した馬の攻撃をギリギリで躱したのだが、道島の右手が片山の右肩をかすめた。ビチャリと液体が服に染みる。


 「記憶を無くす程に…。泥酔・・するぞ…。」


 グラリと片山の肉体は揺れた。血中アセトアルデヒド濃度が高くなる。呼吸が速くなり、体温が上がる。


 「何でこの能力が産まれたのか…。解らなかったんだよ…。でも…。漸く思い出せた。そういや過去に道島に想い人が出来た事があってな…。」


 片山はソレでも意識を保ちながら対応していく。道島からの攻撃のみ躱す事を優先にし、馬からの攻撃に依るダメージを負う覚悟を決めたのである。


 「【既成事実を創らせたんだよ。】ベンゾジアゼピン系睡眠薬とベンゾジアゼピン系の抗不安薬を酒に入れる様に指示したんだ…。記憶を無くす程の効果があるんだよ…。其奴そいつソレを真に受けてさ。実行しやがった。」


 如月はいやらしく嗤った。


 「そんでさ。後悔して鬱病になって自殺したんだよ。嗤えるだろ?」


 片山の瞳は悲哀を孕む。


 「貴方が過去の話をするのなら僕も過去の話をさせてもらうよ…。僕はね…。総てを失ってようやく…。理解したんだ…。外見や上辺だけで人を判断してはいけないってね…。」


 「何の話をしてんだ?」


 「人は中身・・が大事だって事さ…。」


 【所在無き風船…。】


 く落ち着いた聲が響いた。

 

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