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光の先。屈折


 思い出した…。


 【スメルズ・ライク・ティーン・スピリット】


 僕は囁いた。


 顕現けんげんしたのは剪定せんていのこぎりと小盾だった。左腕のガントレットは常時展開をしている。小盾は防御する為の防具ではなく、持った盾を相手に叩きつけ、突き当てる攻撃を主としつつも攻防一体の武器として扱っている。要は【スメルズ・ライク・ティーン・スピリット】の能力。武器の創造。そのシステムの穴を突いた結果の産物だ。


 けれど、どの装備にも若い女性の泣き叫ぶ顔が浮かび上がっている。僕は、その顔を知っていた。理想とした【桃源郷】の実現の為に犠牲となった女性の顔だ…。その苦痛に歪んでいるかにも視える表情は【生きている】。瞬きもするし、呼吸もする。血の涙を流し、すすり泣く。


 そして…。会話や意思疎通は一切出来ない。ただ恨めしそうな眼で睨んでくる。コレは僕が犯した罪そのモノが形を成したと云う事なのだろう。もし【桃源郷】へと辿り着けたのなら彼女達に笑顔は戻るのだろうか?


 ビリッと音がした。音がしたと同時に下半身が離れていく。激しい痛みと共に捻り切られた様に裂け、内臓がズルリと零れ墜ちた。


 ゴプッ。

 唇からは血液がゴポゴポと溢れる。


 ビリリッ。ビリリッ。

 連続として音が鳴る。音がする都度…。

 肉体は千切れ、捻じれ、切り離される。


 『???』


 意味が解らなかった。何がどうなっているのか、それさえ解らなかった。


 ただ走馬灯が過ぎった。


 幼少の頃。


 僕が【桃源郷】で視た光景。人面樹じんめんじゅ。大きな桃の木になる桃の実。その桃の実は若い女性の顔だった。話し掛ければ笑顔を作りコロコロと嗤う。


 その傍らにがいた。


 そうだ。僕は…。あの時…。

 迚も美しく…。

 迚も恐ろしい…。

 女神の様なモノを視たのだ。


 思い出した。


 その女神は僕に話し掛けた。


 【こんな処を視られるとは想定外ね…。そうだ…。貴方にプレゼントをあげる。】


 僕は魅せられていた。その仕草。声色。視線。雰囲気。存在そのモノに…。


 女神は僕に近付くと…。


 【また、逢いましょう。】


 と云った。


 あぁ。そうだ。僕は、あの人に近付く為に…。あの桃の匂いを纏う女神に逢う為だけに…。


 あの女神が《殺った遣り方》で【桃源郷】を創ろうとしたんだ…。


 また眩い光が広がった。

 鼻腔をかすめる桃の匂い。

 光の先には…。

 恋焦がれた【桃源郷】の光景が…。


 …。

 


 …。

 


 …。














 ゴロリ。

 と僕の首が墜ちた。


 僕は僕を視ている。

 僕だった千切れた肉塊を視ている。 


 あぁ。


 武器に浮かび上がった若い女性達が此方を視て嗤っている。僕を蔑み、見下したかの様に…。ゲラゲラと嗤っている。


 僕が想像していた…。

 僕が恋焦がれた…。

 僕が渇望した…。

 【桃源郷】とは…。

 

 別モノだ…。


 コレが僕の最後の記…


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