死刑囚 轟 京也 ⑪
エントロピーの増大。
僕は何事も無かったかの様に解放された。拘置所から出ると…。世界が変貌した事を否が応でも理解してしまう。崩壊した街並、異形の化物、項垂れながら徘徊している者。耳を塞ぎ叫び声を上げながら座り込む者。
地獄と呼ばれる光景は、この事なのだと思った。崩壊した日常。瓦礫が散在する大地。太陽は灰色の気体に覆われ、その光を奪われている。錆びた鉄の匂いを含む淀んだ空気が漂っていた。
生と死が複雑に入り混じる歪な世界への変貌。生【創造】が過去からのエナジーで、死【消滅】が未来からのエナジーだからこそ…。此の二つは均衡が取れていたのだ…。この均衡が崩れたのならエントロピーの増大が始まるのだろうか…
「これから…。どうするか…。」
キュイィィン。キュイィィン。と唐突に機械的な音が首輪から生み出された。
「つっ…。」
チクリと首筋に何かが刺さる。脳内に美しい聲で言葉が流れ、視界の隅に文字が浮かんだ。
【赤い輪郭で視えるモノは何をしても良い。然し青色の輪郭で視えるモノを破壊、若しくは殺した場合は【ディストピア権能】が発動。東京方面へ移動する事、咎のステージ進行を推奨。】
《轟京也。咎名【スメルズ・ライク・ティーン・スピリット】ステージⅠ。身体能力の向上【小】。眼にした二つ物質を瞬時に合成し、武器として扱える能力。生物として認識しているモノは合成素材としての使用不可。自らの手で持てない質量の武器は合成不可。産み出した武器と神経細胞での融合が可能。》
『どこが自由なんだよ…。まぁ。とりあえずは云う事を聞くしか無いのか…。そして…いつか…。』
そして…僕は歩き出したのだった。
轟 京也。ステージⅠ。
攻撃力 C
防御力 D
精神力《攻》E
精神力《防》E
俊敏性 D
器用値 D
生命力 C
運命値 E




