死刑囚 轟 京也 ⑩
人は…。【そう云う存在】がいないと未来に希望を見出せないんです。
ふぅ。と溜め息を吐くと…。僕の肉体は操り人形の糸が切れたかの様に、意識とは関係無く膝から崩れ落ちていた。立ち上がろうとしても力が丸で入らず、荒い呼吸音だけが響き渡った。視線の先には白雲がピクピクと痙攣をした儘、倒れている。僕の双眸は、その様子を囚えていた。軈て白雲の肉体がピクリとも動かなくなると僕の首元に嵌められている首輪から、音声が流れ始めたのだった。
「とりあえずは…。おめでとう。」
『とりあえず?』
「先ずは…。ちょっとしたプレゼントを贈るよ…。死なれては困るからね…。」
首輪が黒い光を発した。その光に包まれると、僕の肉体から傷が消えていく。
『どういう事だ?』
「此処で生き残ったのは…。君だよ。約束通り、【自由】になる権利と少しの間だけ【拘束】される義務が与えられる…。現在から一年程経ったぐらいに、もう一度生き残りを掛けた戦いをしてもらうよ。それ迄、君は、ある意味で拘束される。君の首にあるネックレス…。コレは【咎】と呼ばれる異能力【ディストピア】の能力の一つなんだ…。現在の君は強制的に監視されている状態でね。外そうとしても、此方の命令に背いてもソレは君の命を簡単に刈り取る…。【咎】の威力は君も身を以て知っただろ?逆らえばどうなるかも解る筈だ…。此方の指示通りにしていれば何事も無く自由に暮らせる…。そして…君への指示はたった一つ。次に呼ばれる迄、自由に生きていて良い。何処に行こうが、何をしようが罰を受ける事は無い。」
僕は思考を巡らす。【総てのタイミングがおかしい…】此処で暴動が起こる事を、此奴は事前に知っていたのだろう。そうでなければ…。こんなにも用意周到とはならない筈だ…。
「聞いても良いか?」
「どうぞ。」
「何故、こんな事をした?」
「世界が産まれ変わったからです。此処だけじゃない…。世界中の総てが変わったんです。もう常識も何も通じない…。そうなったら生き残った人々は何を願うと思います?」
「…。」
「【神様】です。新しい【神様】が産まれる事を願うんですよ。人は…。【そう云う存在】がいないと未来に希望を見出せないんです。そんな存在を我々(・・)が創り出す…。ソレだけです。君は此処で【咎】を手に入れ生き残った…。そんな君だからこそ…。【神様】になれる可能性がある…。」
「もし最後まで生き残れたら。見返りはあるのか?」
「そうですねぇ。【完全な自由】、ソレと願い事も一つだけ叶えてあげますよ。どんな願い事だとしてもね…。例えば…。君が渇望する【桃源郷】とか…。」
「…。」
「だから…。それ迄は死なないで下さいね…。」
咎名【ディストピア】
能力者、能力、ステージ
現在は解析不明。




