異端
本能だった。産まれた堕ちた時から、生きる為に自然と呼吸をするかの様に…。私は【ソレ】を理解出来た。
覚醒めても、未だに夢を見ているかの様な感覚に包まれている私がいた。夢なのか現なのか境界線は曖昧だ。クラクラと目眩がしている。平衡感覚が機能していない。頭の内側から何やら声が聴こえている気もするが、意識はソチラへとは向かなかった。力が入らない。肉体は小刻みに震えている…。そうして私は今一度、ベッドへと倒れ込んだのだった。
異変に気付いたのは、直後の事。窓の外へと顔を向けると、視界に映ったのは、火柱と煙幕。何事かと震える肉体に鞭を打ち、窓を開けた。私は外の景色に我が眼を疑う。崩壊した街並み。無残に横たわる遺体。そして…。見た事の無い様々な怪物。私の知る世界は御伽噺で語られる世界へと変貌してしまっていた。
その内の一匹が、私の存在に気付いたのだろう。此方の方へと歩んでくるのが解った。ドクドクと心音が肉体の内から鳴り響く。 恐怖なのだろうか?いや、ソレにしてはヒドく心は落ち着いている。口角が微かに上がった様な気もする。
そして…何より…。冷静に怪物を観る己がいた。本能だった。産まれた堕ちた時から、生きる為に自然と呼吸をするかの様に…。私は【ソレ】を瞬時に理解する。
【あぁ。コレは元は人間なのか…。】
【欲望に呑まれた人の果てだ…。】
そう。少しずつだが予兆はあったのだ。
気候の変化。
未知の病の蔓延。
終わりのない紛争。
きっと世界は…。
人類を見限ったのだろう。
天罰が下った。
ソレだけだ。
でも…。
私は生きている。
心の内から声が聴こえてきた。
【生きたいか?】
当然だ。私は生きているのだ。死にたくはない。生きていたいに決まっている。
【生きたいか?】
何を聞く事がある?生きていてこそ意味があるのだ…。絶望も希望も生きているから感じられるのだ。
【我等の名を呼べ。】
「✖✖✖。」
肉体に力が漲ってくる。そうして私は階下へと飛び降り、迫りくる怪物へと向かっていった。殺らなければ殺られるだけだと感じたからだ。




