死刑囚 十返 宮子 ⑦
愛していたら何をしても良いの?
その後、私達は離婚した。
DNA鑑定の結果。息子は道島光星の子供であると判明したからだった。
私の手の平からは…。
幸せが零れ堕ちてしまった。
勿論、息子の親権は私が持つ事となり、家に帰れば息子の顔を視る事になる。中学生になったばかりの息子の顔が厭な記憶を刺激し、私は鬱状態になっていった。部屋に引き篭もり、昼夜逆転の生活で毎日を過ごす様になった。
薄暗い部屋で自問自答する。
【私が何をしたのだろう?】
私は何も悪くない筈なのに…。何故、長年連れ添った夫は私達を見棄てたのだろう?私は知らぬ間に知らぬ男の子供を産ませられ、知らない儘に育てさせられていたのに…。被害者である私が何故、責められなければならないの…。被害者である私が何故、塵屑の様に棄てられなければならないの?
何故?何故?何故?
私は、ある結論へと辿り着いた。
夫だった湊も。
息子である楓も。
赦されていい存在では無い…。
存在していい存在では無い…。
愛と憎しみは表裏一体だと聞いた事がある。その通りだった…。愛せば愛しただけ、反転したのなら憎しみは増すだけだった…。
怨恨。怨嗟。遺恨。怨念。宿怨。積怨。旧怨。様々な憎しみが私の胎内で泥々と渦巻いていった。その想いは形を成し人ではない【何か】として産み堕とされた。
気付くと私は湊の首を持っている。バラバラになった肉体を楓に処理させている処の様だ。朦朧とした意識で私は私を俯瞰視していたのだった。
湊の遺体を処理し終えた楓は…。愛していたら何をしても良いの?と私に問う。
「周りの人達はそうだったね。私を愛していた筈なのに…。皆、私に酷い事するんだから…。」
光星の面影を漂わせた楓は…。
数日後。
同級生の女の子を溺死させた。




