死刑囚 十返 宮子 ①
幸せを壊したのは…。
悪夢の亡霊だ…。
「何なんだ?コレは…。」
バンッ。と勢いよく何かを叩きつけた夫は、そう言った。
「何ソレ?意味が解らないんだけど…。ここ数日、家に帰らなくなったと思ったら…。帰ってきた途端に怒鳴りつけるなんて何考えてるの?莫迦なの?あんた…。」
と私は強く言い返す。私は知っている。夫が見知らぬ女性と半年程前から密会している事を…。そして…。何もかもを私の所為にして私有責に離婚をしようとしている事を。
「何を考えているのか解らないのは御前だろ…。何なんだ?コレは…。」
夫は机に叩きつけた何かを広げていく。ソレは数枚の資料だった。事細かな文字が羅列しているのが視える。その文字の羅列の中には数枚の写真が添付されていた。その写真には私ともう一人の男性が写り込んでいる。
「俺は半年前から、興信所に依頼していたんだよ。」
途端に脳裏に蘇るのは…。
忘れていた悪夢だった。
「何で黙っていた…。何で話してくれなかったんだ?」
夫は重苦しい表情を浮かべている。
「何で?。どうして?」
私の唇から零れるのは…。
疑問符の付く言葉だけ。
【幸せを壊したのは悪夢の亡霊だ…。】




