被告人 渋澤 円
この両の手は…。
気付くと私は病院のベッドの中でした。
そう…。
私だけが死に後れたのです…。
悔やんでも…。
悔やんでも…。
悔やみ切れません…。
私は…。
母の生命を奪ってしまいましたが…。
もう一度…。
母の子として生まれたいと思います。
私は震える手を見る。
私の…。
この両の手は…。
母を殺める為にあったのでしょうか?
近々、裁判を受ける事になりました。。
真実を話さなければ…。
悪人を演じ切れば…。
私は確実に死刑にされるでしょう…。
死刑執行となれば…
確実に両親の後を追える…。
そう。思いました。
どの様な事情があれど…。
私が罪を犯した事に変わりありません。
母親殺しは大罪なのです…。
もう一度。
私は震える両の手を見る。
母の首を絞めた時の感触を…。
この両の手は覚えている。
お母さん…。
ごめんなさい…。
現在。
気付きました…。
私の両の手は…。
貴方を殺める為に…。
あったのではなく…。
貴方を抱きしめる為に
あったのでしょう…。
私は…。
審判の時が来るのを…。
静かに待つ事にします…。
そう覚悟を決めた時…。
私の視界は白く染まりました…。
白い光の中で…。
愛する母の幻影を視たのです。
渋澤円。
二十一歳。女性。
後に【慈愛】と思われる咎を発症。
咎名【HUGs】
併存疾患を有するステージⅡ。




