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覚醒


 私には何の才能も無かった…。


 辺りを見渡す。周囲を見て理解した事があった。どうやら私の口には、猿轡さるぐつわが嵌められているらしかった。道理で口周りが濡れている筈だ。


 呼吸が乱れる。漏れる吐息は湿度を高めていく。そして…。意識とは無関係によだれが零れた。その状況とは裏腹に冷静な自分がいた…。そんな私は【あぁ。獣みたいだな。】と、苦笑している。


 【滑稽だ…。】不意に、そう思った。


 私は夢の中でさえ滑稽なのかと、また苦笑する。そう。私の人生は滑稽だった。私には何の才能も無かったからだ。才能が無いのに、夢を見る。夢を見ては努力して、努力したからこそ、己の限界を知った。そうして己の限界を知ると…。夢は夢なのだと現実を突き付けられた。ソレを繰り返すだけの人生である。文学も音楽も夢見るモノは、総て私の掌から零れ落ちた。


 【夢を追い続ければ叶う。】


 その言葉は夢を叶えた人間の言葉だ。私の手が届かない高みから聞こえてくる言葉だ。羨ましかった。妬ましかった。いつも私は見上げるだけだったのだ。


 無意識に天井に視軸をずらすと、遥か上空から声が舞い降りる。


 《ヨウコソ オイデクダサイマシタ》

 《アナタハ エラバレタノデス》

 《サァ トキハナチナサイ》


 声が終わると同時に…。天空から何かがドサリと落ちてきた。元は人間だったであろう冷たい肉塊だ。ソレは、次々に咀嚼音の様な音を出し降り注いだ。肉塊は積み上がっていく。


 【あぁ。】


 グチャリ。と音が鳴り響く度に赤色の液体は広がっていった。椅子から解き放たれた私は、肉塊で創られた階段をクチャクチャと音を立て、這いずりながら昇る。


 階段を昇れば昇る程に、死体が積み上がれば積み上がる程に、私は夢に手が届く様な気持ちになった。


 脳内に綺麗な声が降り注ぐ。

 【イレギュラースキル【✖✖✖】を入手しました。】


 その言葉が心に刻まれると…。


 私の意識は暗転した。 


 どうやら私には…。

 人殺しの才能があるらしい…。

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