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死刑囚 灰谷 玲央 ③


 生き残る為の希望を語り合った。


 戦況が危うくなり、部隊が後退していた時の事だ。年が近い事も有り親しくなっていた仲間がいた。共に敵前から逃亡していた最中、彼も俺も脚を負傷し、身動きが取れなくなってしまったのだった。薄暗い洞窟を見つけ、二人で身を隠す。励まし合い。生き残る為の希望を語り合った。


 然し…。救助が来る事も無く時間だけが過ぎ去っていき、負傷した脚は時を重ねる毎に酷くなっていった。やがては二人共、寝た切りの状態となった。水も食糧も底を突き、遂には俺達の首筋に死神の鎌が突き付けられる様になってしまったのである…。


 飢餓状態になると、三つの異なる代謝フェーズが有るのだと聞いた事があった。


 フェーズⅠ。肉体がブドウ糖の燃焼を抑える為、必要な分のブドウ糖を生成する様になる。この時点でブドウ糖が肉体の内で燃焼し、脂肪酸へと変化する。脂肪分子を作り、肉体の細胞の中へと蓄えられる。


 フェーズⅡ。脂肪燃焼が始まる。肝臓が脂肪酸を代謝する様になる。これはケトン体と呼ばれ、ブドウ糖の変わりのエネルギー源となっていく。このケトン体と呼ばれる化合物は、アセト酢酸、β-ヒドロキシ酪酸、アセトンの三つの違った水溶性体と変化し、肝臓から心臓と脳に送られる。


 最終フェーズ。フェーズⅢ。肉体は脂肪を使い切った後、最終手段としてプロテインを燃焼する。そして…。急速に筋肉の減少が始まる。肉体の細胞が分解され、プロテインがアミノ酸へと変化するからだそうだ。細胞は、肉体を機能するのに欠かせないモノ。その為、急激に肉体の機能が低下していく事になる。ソレは…。己の肉体を己で喰らう様なモノ。人食い行為と云えるのだろう。


 苦痛から解放されたかの様な穏やかな笑顔で彼は俺に…。こう云った。


 「この儘だと、共倒れになる…。御前の方が生き残れる確率が高そうだ…。だから…。御前は生きろ。生きて俺の両親に伝えて欲しい事がある。だから…。お願いだ…。俺を…。」


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