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死刑囚 灰谷 玲央 ①


 戦争と云うのは…。

 想像していたよりも…。

 遥かに現実的だった。


 物心付いた頃から漠然と考えている事がある。もし天賦の才が有るのなら誰よりも強くなれるのだろうか…と云う事だ。馬鹿げた想いだとも思うし、大人になるにつれ忘れてしまう様な想いだとも想う。傍から視れば英雄に憧れるのは子供だけなのだろうが、俺はその憧憬を忘れる事が出来無かった…。


 中学を卒業すると高校へは行かず、労働をしながら肉体を鍛えた。金を貯め、十七歳になる頃、傭兵になる為に祖父母の暮らす国へと向かった。祖父の国では十七歳から四十歳迄なら傭兵になれるらしいと聞いたからだ。祖父は過去、名のある軍人だった様でつてがあると云うのが僥倖だった。


 戦争と云うのは想像していたよりも遥かに現実的だった。常に生死を天秤に掛け、傾いた側に己の生き死にが決定すると云う具合に至ってシンプルに構成されている。それこそ…。生き残る為には何でもした。不意打ち、奇襲、騙し合い。その世界では己以外、総ての人間を敵対者としなければならなかった。女も子供も…。況してや仲間でさえも…。疑いの目で見なければならない。何時いつ、どのタイミングで寝首を掻かれるのか解らないからだ…。


 あの出来事があったのは、傭兵の経験にも慣れてきた暑い真夏の白昼だった。その時の事。俺の属する部隊は、ある街で命令が有る迄待機をしていた。前方から何かが近づいてくるのが見え、一瞬の内に此方側は銃を身構えた。然し、何故か先頭に立つ傭兵は銃を下ろしたのである。何事かと前方へ視界を向けると、見るからに痩せ細った少年が仔犬を抱えながら歩いてきているのが解った。


 先頭にいた傭兵が保護をしようと少年に近付いた瞬間…。少年の肉体とともに傭兵の肉体が爆ぜた。小型爆弾を服の下に忍ばせた少年だった。少年は微笑みを浮かべながら、スイッチを押した。自爆攻撃だったのである…。 

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