表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
32/84

死刑囚 涼宮 凛音 ③


 私の心は…。

 空っぽとなった…。


 華蓮は溺死との事であった。私は後日、遺体の身元確認で呼ばれた。衣服と所持品から華蓮であると断定されたのである。所持品を確認する。ソレでも現実とは思えなかった。信じられなかったのだ。


 せめて顔を見せて欲しい。と伝えたのだが見ない方が良いと別室へと通された。淡々と説明され、淡々と事務処理は続いていく。


 華蓮は私の総てだった。その総てを無くすのには耐えられそうに無い。だからせめて…。


 「どうしても最後に顔を一度だけ見たいんです。」


 と私は警察官に懇願する。


 警察官は視線を反らし…。御気持ちは解りますが…。と深々と頭を下げた。


 「遺体の損傷が激しいので…。これから事件性があるのかを確認します。検視、検案する事になり、場合によっては解剖する事になります。御了承願います…。」


 その言葉は、迚も遠く聞こえた。


 数日後、再度警察から連絡があった。頭部に殴打された形跡が見つかったとの事だ。殺害された可能性が有ると云われ、私の胎内に黒い感情が芽吹く。犯人がいるのなら私の手で殺してやりたいと強く思った。


 数ヶ月経過して…。

 事件の真相が明らかとなる。


 華蓮は殺害されていた。華蓮の同級生四人による暴行であった。だが、彼等の話に依れば殺意は無かったとの事。華蓮の態度が気に入らず、少し痛めつける為にやったのだと証言した。気を失った華蓮を見て死んだものと思い、怖くなり池に沈めたのだそうだ。その時にはまだ華蓮は生きていたらしく、池に沈められた結果、大量の水を飲み込み、溺死となった…。


 結論から云うなれば…。

 彼等は刑事罰を科されなかった…。


 彼等が十三歳以下だったからだ。


 刑法四十一条。

 【十四歳未満の者の行為は罰しない。】


 彼等は罪を犯した扱いではなく【触法少年】として扱われたのである。


 私の心は…。空っぽとなった…。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ