死刑囚 涼宮 凛音 ③
私の心は…。
空っぽとなった…。
華蓮は溺死との事であった。私は後日、遺体の身元確認で呼ばれた。衣服と所持品から華蓮であると断定されたのである。所持品を確認する。ソレでも現実とは思えなかった。信じられなかったのだ。
せめて顔を見せて欲しい。と伝えたのだが見ない方が良いと別室へと通された。淡々と説明され、淡々と事務処理は続いていく。
華蓮は私の総てだった。その総てを無くすのには耐えられそうに無い。だからせめて…。
「どうしても最後に顔を一度だけ見たいんです。」
と私は警察官に懇願する。
警察官は視線を反らし…。御気持ちは解りますが…。と深々と頭を下げた。
「遺体の損傷が激しいので…。これから事件性があるのかを確認します。検視、検案する事になり、場合によっては解剖する事になります。御了承願います…。」
その言葉は、迚も遠く聞こえた。
数日後、再度警察から連絡があった。頭部に殴打された形跡が見つかったとの事だ。殺害された可能性が有ると云われ、私の胎内に黒い感情が芽吹く。犯人がいるのなら私の手で殺してやりたいと強く思った。
数ヶ月経過して…。
事件の真相が明らかとなる。
華蓮は殺害されていた。華蓮の同級生四人による暴行であった。だが、彼等の話に依れば殺意は無かったとの事。華蓮の態度が気に入らず、少し痛めつける為にやったのだと証言した。気を失った華蓮を見て死んだものと思い、怖くなり池に沈めたのだそうだ。その時にはまだ華蓮は生きていたらしく、池に沈められた結果、大量の水を飲み込み、溺死となった…。
結論から云うなれば…。
彼等は刑事罰を科されなかった…。
彼等が十三歳以下だったからだ。
刑法四十一条。
【十四歳未満の者の行為は罰しない。】
彼等は罪を犯した扱いではなく【触法少年】として扱われたのである。
私の心は…。空っぽとなった…。




