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死刑囚 涼宮 凛音 ①
私は幸福の只中だった…。
私は十四の時に妊娠をした。相手は四歳上の恋人だったけれど…。発覚と同時に私の前から姿を消した。ソレでも私は肉体の内に宿る生命を失わせたくなかったから、両親に頼み込み出産をする事にしたのだった。
私は…。
産まれて来てくれた子を…。
【華蓮】と名付けた。
華蓮を幸せにする為に高校へは進学せずに働く事を決めた。朝も昼も夜も働ける時間には働き、働けない時間は華蓮との時間を大切にする様に心掛けた。寝不足でも、過労だとしても私は幸福の只中だった。
十八になってからは夜の仕事を中心とした。ソレなら華蓮との時間が増やせると思ったからだ。何だかんだ云っても金銭が無ければ立ち行かなくなる。金銭が無ければ最低限の暮らしすら儘ならない。少ない時間で稼ぐには夜の仕事しか無かったのだから選択肢も無かった事もある。
華蓮には幸せになって欲しかった。
いつも笑顔でいて欲しかった。
ソレだけだった。
そんな些細な幸福を願い…。
私は命を削る様に懸命に働いた。




