終焉の始まり。
人は産まれながらに罪を背負っている。
世界は想像よりも早く崩壊した。その始まりは東京を覆った稲光の様な光だったと記憶している。大きな音と共に夜空一面が真っ白となった。後の報道で知らされたのは…。純白の景色が十分十秒続いたとの事だ。視界を奪われ、聴覚を奪われた人々は何故か一様に意識を奪われた。
私はと云うと…。夢を視ていたと想う。
私の視界は光が一切無い闇に覆われていた。感覚からして私は椅子に座っている。何かを咥えさせられているのか唇は【オ】の形の儘で動かない。そして、手足の自由が効かない様に椅子に金属の鎖で固定されているのだろう。動かそうとするとジャラジャラと金属が音を奏でる。視覚が無いからか聴覚は鋭敏になっていた。
意識を聴覚へと向けると…。
複数の息遣いが聴こえた。ソレが人から発せられるモノなのか、獣が発するモノなのか、私には判断出来ない。ただ荒々しい息遣いだけが聴こえているだけだった。何れ程の時間が経過した頃だろうか…。
頭上から別の音が産まれた。人の神経を逆撫でするかの様な摩擦音。すると光が少しずつ差し込み始める。本能が目蓋を閉じる、其れ程までに、其の光は眩しかった。
徐々に徐々に視覚が機能を回復していく。光が網膜で像を結ぶ。私の瞳に映ったのは様々な色の【つなぎ】を着た夥しい数の人。人。人。
青色。黄色。橙色。赤色。
どうやら…。
私が着ている【つなぎ】の色は…。
赤色だ。




