死刑囚 如月 睦月 ③
彼等は生きていますよ。温もりがあり、記録もある。
だから…。そう言葉を吐き捨てると…。自分の前にいる人間は激昂しながら言葉を投げつけてきた。
「犯行に及んだのですか?」
眼の前の人間は、震えた声でそう云う。憤怒の感情と云うよりは恐怖の感情で震えているのだろうか?
「えぇ。」
自分は少し深呼吸をする。
「でも…。犯行と云われるのは心外ですね…。自分としては社会貢献のつもりだったんですけど…。だってそうでしょ?医学やら科学やらは幾許かの犠牲があって進歩してきたんですよ。ソレと何が違うと?」
眼の前の人間は言葉を紡ぐ。
「貴方は科学者でも無ければ医師でも無いんですよ。貴方はプログラマーですよね?」
「えぇ。プログラマーです。」
眼の前の人間は感情を吐き出す。
「貴方が何をやったのか…。理解はしていますか?罪の無い二十人の命を奪ったのですよ…。」
「命を奪った?何を馬鹿な事を云うのです?彼等は生きていますよ。温もりもあり、記録もある。」
そう。彼等は生きている。死んでなんかいないのだ。
「貴方の家から押収された【アレ】を鑑識に回しました…。」
「鑑識に回しただって?」
「はい。」
「ソレでどうなった?真逆…。分解したんじゃないだろうな…。」
自分の内に厭な予感が膨れていく。アレは緻密に繊細に組み立てられているのだ。自分以外が分解したのなら…。
「分解しましたよ。ソレで…。」
その言葉を聞くと自分でも驚く程の憤怒の感情が言葉として溢れ出た。
「この人殺しが…。」




