死刑囚 白鷺 真 ④
嫉妬の炎が私の総てを焼き尽くしていく。
大学を卒業し就職して暫くしてからの頃。恋愛に苦手意識を持っていた私に、初めて恋する感情が芽生えた。彼女は職場の先輩で私の教育担当だった人だ。初め、心の壁を創っていた私にも根気良く接してくれた彼女に、徐々に惹かれていった。【恋焦がれる】とは、この事なのだと思った。
恋と云うモノを知ってから、炎を眺める時以外、モノクロに視えていた世界は鮮やかに色付き初めていく。世界とは、こんなにも美しいモノなのだと思えた。そんな矢先の事だ。恋焦がれた彼女には恋人がいる事が解った。そうして…。私の心には嫉妬の炎が灯される事となる。ソレはメラメラと燃え、辺りの酸素を奪い尽くしていった。息苦しくて呼吸困難になる。嫉妬の炎が私の総てを焼き尽くしていく。恋人がいるのなら、私に気がある様に思わせるのは間違いなのではないのか…。だから私は彼女を観察する事にしたのだった。
数ヶ月彼女を観察して解った事があった。どうやら彼女には不特定多数の恋人がいる様だった。不貞行為だ。不貞行為も地獄へと墜ちる要因の一つだ。
彼女がいつか天国へと旅立つ様に…。
私が導かなくてはならない…。
そう思った。
そう思ったから深夜に彼女の家に忍び込んだ。眠りに就く彼女の口にタオルを突っ込んで、その上から紐で縛り付ける。恐怖で引き攣る彼女の唇はわなわなと震えていた。そんな彼女を腕も脚も固定して椅子に座らた。彼女の前に小型の監視カメラをセットして、少しの灯油をかけて火を点ける。私は足早に家から出ると、少し離れた場所からスマホで画像を確認する。彼女は多色の炎に包まれて燃えていた。
その姿は…。
現在迄に観た誰よりも…。
美しかった。
その後…。
私は逮捕され、死刑を宣告された。
死ぬ迄の時間を過ごしていた時…。
世界は白い光に包まれた。
白鷺真
二十八歳。女性。
後に【堅固】と思われる咎を発症。
咎名【モス・イントゥ・フレーム】
ステージⅡ




