死刑囚 白鷺 真 ③
殺意なんて無かった…。
それ以来、私は炎に魅了された。
炎は火の穂。気体の燃焼時に見られる穂の様な光と熱を発している部分を指す。構造としては、燃焼する可燃性の気体にあらかじめ酸素が混ぜられているか混ぜられていないのかで異なる。
例えば蝋燭の炎ならば拡散燃焼と云われている。熱で発生した可燃性の気体と周囲の空気中の酸素が拡散により混合して燃焼している。この拡散燃焼の場合では、炎の内側になる程に酸素濃度が低くなる。濃度に応じて炎は大きく分けて3つの部分に分けられる。炎の外側から外炎、内炎、炎心と呼ばれ、外炎は一番の外側となり、炎の中で最も高温となる。ソレは酸素との接触が充分になるからだ。
そして…。炎は色彩豊かである。温度と燃焼する物質によって色は変化する。炎の温度では赤(暗赤色)は約500〜800℃。橙〜黄色は約1,000〜1,200℃。白〜青は約1,300〜1,600℃。青は約1,600℃以上。
炎色反応では…。赤はリチウム。黄色はナトリウム。紫はカリウム。緑は銅。橙色はカルシウム。虹色はストロンチウム。
炎を見つめていると私は幸せな気持ちに包まれる。炎の綺麗な色に包まれれば、肉体は綺麗な色に変色する。そして…ブスブスと肉体は燃焼し肉体からは煙として魂は天国へと向かう。
自殺する人間は地獄へと向かうと聞いた…。だから私は自殺志願者を募り、天国へと向かわせる為に火を点けた。殺意なんて無かった。ただ彼等の天国での幸せを願っただけ…。
ソレだけだ。




