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死刑囚 白鷺 真 ①


 現在でも【死】とは何かと聞かれれても答えられる自信は無いけれども…。


 思春期の頃。私は父方の祖父母の家に預けられる事が多かった。或る夜の事。祖父母の何方かがマッチを誤って発火させたとの事で、火災が発生し祖父母の家は焼けちた。祖父母は私を庇う様に覆い被さり亡くなってしまったのだが、そのお陰か私は奇跡的に無傷で生存する事となった。


 暫くして通夜が行われた。何時いつも忙しなく働いていた両親が、その時には私の傍らに居て優しかった事を現在でも鮮明に覚えている。


 その頃の私には【死】と云う概念が余り解らなかった…。現在でも【死】とは何かと聞かれれても答えられる自信は無いけれども…。


 そんな私は祖父母が起きて来ずに、眠り続けているのか疑問に思っていた事を両親に問うと…。


 「お祖父ちゃんとお祖母ちゃんは、其処で寝ているんだよ。」


 と、木の箱を指差した。そして…木の箱の横に座っていた私に父親は涙ぐみながらも優しく声を掛けた。


 「お祖父ちゃんとお祖母ちゃんは空の向こうにある天国に行ったんだ…。」


 云っている意味が解らなかった…。私の横にある木の箱で祖父母は眠っている筈なのに、空の向こうの天国にいるとはどういう事なのか…。


 「だから【さようなら】を云おうね。」


 「解った。」

 私は首を縦に振った。


 ちゃんと、お祖父ちゃんお祖母ちゃんの顔をてお別れの挨拶をしたかったのだけれど…。絶対に木の箱を覗いちゃ駄目よ。と、そう母親に云われていた。だから木の箱に向かって【さようなら】と私は云う。だけど返事は返っては来なかった。


 木の箱を見やる。顔があるであろう場所に蓋で開く小窓があった。彼処を開けばお祖父ちゃん、お祖母ちゃんの顔が視えるのだろうか…。


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