叶わぬ夢の叶え方
何を待てと云うんだい?
「月執は危険因子です。」
漆川は、そう云った。
「そうか…。で、姫川は?」
「申し訳有りません。あれ以上は危険と判断して撤退してしまいました。ですので姫川の安否は解りません。」
「【ディストピア】からの信号が途絶えたから…きっと死んでしまったのだろうね。でもね…。姫川を助けずに見捨ててきたのはどうしてなのかな?危険と云うのは何を指しているんだい?真逆、死ぬのが怖いなんて云わないよね?漆川…。」
四方堂から殺気が迸る。
「僕はね。思う事があるんだ。僕達は一つのファミリアだってね。君は見捨てて、自分だけ助かりたいと逃げ帰ってきたって事なのかな?」
漆川の肉体は意識とは関係無くがたがたと震えていた。脊髄に冷えた金属を流し込まれたかの様な錯覚に陥る。
「漆川…。君の【咎】【壁越しの監視者】の様な能力はどこにでもある能力なんだよ。ソレでもファミリアだからと傍に置いていたのに…。残念だよ…。」
「待って下さい…。」
「何を待てと云うんだい?」
「これからは…。」
「これから?姫川にはソレすら無くなってしまったんだよ…。可哀想だとは思わないのかい?彼女にも叶えたい夢や理想や願いがあった筈なのに…。彼女の未来は断たれてしまった。漆川…。君が断ってしまったんだよ。人はね。生きる事に意味を見出そうとする。その意味を解りやすくしてくれるのが夢や理想、願いなんだ…。例え叶えたとしても新たな夢や理想、願いを求める程にね…。人が幸福になる時は、夢や理想、願いを追い求め続けている時なんだ…。もし、ソレが叶わぬ夢なのだとしたら…。僕が醒める事の無い永遠の夢をプレゼントしよう…。夢の中で夢を視て永遠の幸福に身を委ねると良い…。」
「お、お待ち下さい。」
「ダメだよ。漆川…。」
漆川は死を悟った。
次に四方堂が紡ぐ言葉を…
識っていたから…。
「おやすみ…。良い夢を…。」
【ドリーム・シアター】
その【咎】の名を…。
子守唄の様に優しく云い聴かせた。




