蟲
その能力発動の条件は少し特殊でね…。
生贄が必要となる…。
闘技場に死臭が這いずり廻る。足元から立ち込めるソレは軈て姫川の本能へ浸食していった。死臭は無数の腕となり姫川を束縛する。ソレに呼応するかの様に、夜の帳に紛れ地面に接した漆黒の雲が空気中に微細な水滴を浮かばせていった。
漆黒の霧が辺りを覆う。
「その【咎】は特殊な疫病を蔓延させる能力を持っている…。名付けるのなら【第四の死】と云う名の【咎】だよ。その能力発動の条件は少し特殊でね…【生贄】が必要となる…。」
月執は【所在無き風船】を指差した。
《サラ。力を貸りるよ。》
サラの脳内に言葉が響く。
【所在無き風船】は恍惚としていた。月執は【所在無き風船】の傍らに立つと抱き寄せ…。右太腿付近のレッグポーチからミリタリーナイフを取り出し、【所在無き風船】の背中へと突き刺したのだった…。
叫喚だった。其処には叫喚だけが在った。叫喚が響けば響く程に漆黒の霧は黒く濃くなっていった。
《ルル。【死の咎】の過程を飛ばせ。》
《ベルーゼ。【蠅の卵】を産み付けろ…。》
《ジェーン。【虚飾】を全解除だ。》
命が下された大罪人は狂喜乱舞する。
「ん。」「仰せの儘に。」「承知しました。」
姫川の肉体は足元から…。ユックリと腐敗する。皮膚は変色し、肉は溶けて、骨は崩れていった。ソレでも姫川は意識を失う事は無く、月執の真の能力と己の【死】を脳に刻み込まれていく。
「言い残す事は有るか?」
月執は問う。
姫川は少し微笑んだ…。
恐怖へのグリマスだった…。
「やっぱり私…。嘘が嫌いです…。真実が視えなくなる…。でも…。真実が視えないからこそ、幸せになれる人がいる。嘘が人を救う事も有るって事…。忘れてました…。思い出しました。もし産まれ変われるのなら…。その時は…。」
姫川は静かに眼を閉じた。
「誰かを幸せにしたいです…。」
「そっか…。」
月執は空を見上げ、手を伸ばす。
煌々と輝く月には触れられなかった…。
月執明日花。
二十二歳。女性。【原罪】
罪名
【九大罪 ナイン・デッドリー・シンズ】
能力【九つの大罪の擬人化に成功。その九人の大罪人を隷属させる事が可能。隷属させた大罪人の能力の一部が使用可能。】
ステージ✙
全能力値 D(eadly)
九人いる大罪人の内、現段階では四人を隷属させる事に成功。【怠惰】【暴食】【虚飾】【色欲】の能力の一部が使用可能。
現段階で月執が使用可能な能力。
【暴食】大罪人ベルーゼの能力。
【特性】【性質】【咎】を喰らい自らの能力とする事。人間の持つ【咎】に関しては相手からは奪う事は出来ない。然し、相手の能力をステージ0の状態で習得可能。習得不可の【咎】の存在も有る。
【怠惰】大罪人ルルの能力。
過程を飛ばし結果、効果のみを得る。但し、【咎】に関しては【境地】に至らせる事は出来ない。〈【咎】を持つ本人のみが【境地】に辿り着けると云う理ことわりが存在する為。〉この能力は自分自身が持つ能力に対してしか発動出来ない。
【虚飾】大罪人。ジェーンの能力。
嘘を扱う能力。自分に吐く嘘。相手に吐く嘘。を真実へと変える。直接的に肉体、生命に損傷を与える様な嘘、自己を含め他人が持つ【咎】に関しては使用不可。ステータス欄は【咎】としての扱いにはならない。
【色欲】大罪人。サラの能力。
汎ゆる状態異常を与える。状態異常無効。痛みを快楽へと変える。痛みが快楽へと変われば変わる程に状態異常能力が強化。快楽を感じる程に肉体、精神の能力上昇。
各大罪人は【世界そのモノ】に関する理には能力の効果は無効となる。新世界に産み堕とされる際に、能力の大半を忘れたとの事。




