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ディストピアへ堕り立った大罪人⑥


 もう…。どうでもいい…。


 一つ。疑問が残る…。

 と姫川は問うた。


 「ソレ程迄の能力が有るのなら、何故、あの時…。片山を救わなかった?貴様なら助けられた筈だ…。」


 「助ける理由が無いからだよ。別に親しい間柄でも無いしな。」


 「だとしたら干渉に浸ってた訳では無いと?」


 「怒ってはいたな…。私の【咎】を傷付けようとしていたからな。」


 姫川の思考を遮る様に月執は続ける。


 「まだ理解出来ないのか?良い加減に認めろよ。御前じゃ私に勝てない。」


 月執は人差し指で顳顬こめかみをトントンと叩いた。


 認めない…。と、姫川は拳を強く握り込み、殺意の籠もった瞳で月執を囚える。


 「って不思議だな。自分の理解が及ばないモノには眼を伏せて、自分の都合の良い意味を与え、ソレを信じ込もうとするんだよ…。」


 御前。そう云い姫川を指差す。


 「まだ私の【咎】が【サッド・バット・トゥール】で嘘を扱う能力だと思い込んでるのか?」


 姫川は首を左右に振り、言葉を振り払おうとして居る。


 『嘘の種類は三種類。自分に吐く嘘と相手に吐く嘘。そして…単なる嘘。嘘を吐く場合、己の意図を優位性を高める、しくは低める為に吐かれる。しかし嘘を吐いたところで…。事実は変えようが無いのがことわり。もし総ての嘘を事実、真実へと変える能力が存在するのなら、ソレは世界を創り変えられるのと変りはしない…。だとしたら何らかの制限がある筈…。』


 姫川は思考する。だが思考すればする程に事実からは遠ざかってしまう。そう。事実が姿を隠すのは…。いつもたった一つの吐かれた嘘だ。


 「もうどうでもいい…。」

 姫川はポツリと呟いた。

 思考を完全に放棄する。

 すると想いだけが広がった。


 『私は完全なる統治国家を創らねばならぬ。完璧な規律があってこそ平和が成立するのだ…。新しい国を創る為なら…。再生は破壊から始まる。だから…。もう何もかも壊れてしまえ…。」


 月執は異変を感じ取り微笑んだ。


 姫川の肉体は空へと浮いていく。


 《器は満たされました。【境地】へと至ります。【ディストピア】は【ディストピア・コァズモス】へと至りました。現在迄に獲得した能力に加え、貴方を中心とした半径500mは貴方が理想とする統治国家へと変貌可能です。其処で貴方は王【コァズモス】となるのです。》


 「羨ましいな…。御前…。私は【境地】には【高み】には至れないから…。」


 月執は姫川を見上げていた。


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