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ディストピアへ堕り立つ大罪人①


 跡形も無く弾けて消えた。




 【ディストピア…。】


 闘技場。姫川を中心に冷酷な聲が波紋状に広がっていくと、片山の肉体は空へと浮遊し始めていった。姫川は【所在無き風船】の傍らに、しゃがみ込む。


 「わたくしの【ディストピア】の能力の一つ。しくも片山様の能力に似ているんですよ…。肉体が膨らんで…。弾けて…。一欠片の肉片も残りません。」


 と【所在無き風船】の耳元で呟きながら、両の手をバチッと合わせるかの様に強く叩き付けようとした…。


 その刹那。


 闘技場に暗く沈んだ聲が墜ちた。


 【レディ・ピクチャー・ショー】


 月執は姫川の方向へ、両の手をL字の形にしカメラのフレームを形創かたちづくった。月執の手の平の上に一枚の写真の様なモノが顕現する。


 同時に…。バシュッ。と片山は跡形も無く弾けて消えた。


 「何なのです?助けたかったのでしょうか?でも…。残念…。少し遅かったみたいですね。」

 姫川は嘲笑する。


 「…。」

 月執は表情を変える事は無かった。


 「良いですよ。わたくし、疲れていませんし…。この儘、決勝戦といきましょう。」


 「…。」


 月執は姫川の方へは視線を向けてはいない。【所在無き風船】が生き絶えた場所を眺めている。その場所には血溜まりがあった。


 「…。」


 「月執様にも人並みの心が在ったのですね。もしかして…。感傷に浸っているのですか?月執様らしく無い…。幻滅いたしました。」


 「…。」


 月執は姫川の言葉に反応しない。


 「だんまりですか?」


 「…。」


 月執は拳を強く握っている。指と指の隙間から真赤な血液が滴り落ちた。


 「何か云って下さいよ。」

 姫川は嗤う。


 「…。」


 ポトリポトリと血液が堕ちていく。

 月執の血液の匂いが辺りに漂った…。


 「…。」


 「月執様…。貴方でも絶望すれば言葉を失うのですね…。何も恥ずかしい事では有りません。ソレが人間ですから…。」


 血の匂いが強くなる。鼻腔を刺激する錆びた鉄の匂い。死を連想させる背徳の匂い。すると…。【所在無き風船】が生き絶えた場所…。その血溜まりがユラユラと蠢いた…。

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