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監視者と所在無き風船③
大好き…。
片山がユラリと立ち上がる。その姿には悲壮感が漂っていた。【ディストピア】の規律に抗いながら…。酷く優しい聲で【所在無き風船】に聴かせる。
「逃げろ。」
【所在無き風船】は悲哀が混じる瞳で片山を視た。一陣の風が吹き、銀髪のロングウルフが揺れる。
「もし…。逃げたら…。片山様を殺しちゃいますよ。良いんですか?」
姫川は冷たく、そう言い放った。
「実は自立型の【咎】って少なくは無いんです。胎天地心教では様々な実験も行っていまして…。自立型の【咎】を持つ咎人の実験報告書には…。【能力者が死ねば【咎】は消失する。】との事。此の言葉の意味は理解出来ますか?要するに…。片山様が死ねば【咎】である貴方も死ぬと云う事です…。何方にしろ【貴方】は助かりません…。逃げたいのならお好きにどうぞ…。」
でも…。と、一呼吸置いてから…。【貴方が死んでも片山様は生きてはいけますけれど…。】と続けた。
その言葉を聞いた【所在無き風船】は立ち止まる。大粒の涙を流しながらも彼女は微笑み…。
「リョウ…。大好き…。」
と想いを告げた。




