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行間 月執と片山


 お幸せに…。


 月執は控え室へと移動していた。その間にも欠伸が一つ二つ三つ。右の指で涙を拭っていると前から片山リョウが歩いてくるのが視えた。


 「流石だね…。」

 酷く落ち着いた聲だった…。


 「どうも…。」

 月執は軽く会釈をする。


 「でも…。あの戦闘スタイルも以前視たモノとは違った。本当の君を視れる時はくるのかな?」

 

 切なくも儚い横顔が月執と擦れ違う。


 「さぁ。どうでしょう…。」

 月執は片山の後ろを視た。


 「それはそうと…。貴方の【咎】【所在無き風船】だっけ…。もしかして…。ずっと居るの?」


 片山は立ち止まり、振り向いた。その肩越しから【所在無き風船】は背伸びをして顔を覗かせている。


 「アレから…。消えてくれなくて…。」

 片山は小さく溜息を吐いた。


 【所在無き風船】は月執に向けて微笑む。ロングウルフの銀髪。黒い蛇の様な布が凹凸のある肉体へと巻き付き、唇は深紅に色を染め、妖艶さを際立たせている。


 「何か妬けちゃうかも…。」

 【所在無き風船】は吐息を吐く様に言葉を吐いた。月執は…。ん?と疑問符を零すと【所在無き風船】へと視軸を向ける。


 「あぁ。片山さんの事…。心の底から愛してるんだね。片山さん…。お幸せに…。」


 ヒラヒラと月執は手を振る。


 片山はまた溜息を吐いた。


 【所在無き風船】はソレとは対称的に少女の様にコロコロと笑い…。うん。と純粋無垢な笑顔で返事をした。


 月執の足元に重なる十の影その内の三つが色濃く揺れている。【所在無き風船】はその足元に瞳を向け、ユラユラと揺れている影を不思議そうに視ていた。

 

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