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揚羽と罪人①


 もしかして…。人間辞めた?


 闘技場に二つの人影が在った。光化学スモッグに覆われた空からは鈍い光が降り注いでいる。


 雰囲気変わったね。と月執は白鷺に言葉を掛けた。そう?ありがとう。と白鷺は返す。白鷺の黒髪は腰の付近まで伸びていた。正確に云うのであれば、黒髪に視えるのは炎の残滓ざんしである。内側の髪は紅く燃えているのだが熱は無い。紅と黒のデュアルカラーのフロントジップレザーキャットスーツで肉体を包み、妖艶な雰囲気を漂わせながらも白鷺は冷静に月執を視ていた。


 月執は迷彩柄のハイウェストのガーゴパンツ。トップスは黒いオープンネック、オフショルダーのクロップトップ。動きを重視した服を身に纏っている。帽子を被ってはおらず金のメッシュの入った漆黒の髪が風に靡く。


 「もしかして…。人間辞めた?」

 月執は白鷺に問う。


 「人間を辞めた。ってどう云う意味?人の心を無くしたって事?人の形を失ったって事?ソレとも…。化物に成ったって事?」


 「うぅん。違う。自分への執着を手放せた?苦悩から解放された?って聞いてるの。」


 そうねぇ。そう云うと白鷺は人差し指を顎に添わせた。


 「苦悩は消えたわね。良い気分よ。」


 「ソレは良かった。で…。」


 月執は白鷺との距離を瞬時に詰め、そして…。右の拳を白鷺の左腹部へ叩き込んだ。ガギっ。肉体を叩いたとは思えぬ音が闘技場に鳴り響く。


 「併存疾患。【欲獣化】も発症したと?」


 「詳しいのね。」


 「あぁ。師匠が此の世界で生き抜く為に色々と教えてくれからね。」


 「だから何?」

 白鷺の纏う気質が変化した。


 「知識があるからと云って。貴方に何が出来るって云うの?私の二つの【咎】は併存疾患を含め統合したのよ。知識だけじゃ抗えない。」


 白鷺は月執に視軸をずらす。白鷺の瞳には月執の姿は蝶の様に視えていた。長い黒髪を靡かせ…。白鷺は【咎】の名を空に舞わせる。


 【バタフライ・トゥ・ア・フレイム】


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