前夜祭 考察。蛾と蝶の相違点②
何も解らない。
私は何故に炎に焼かれた蛾に魅入られていたのだろうか?命の煌めきを視たから?違う…。命を失ってまでも魅入られたモノに全てを捧げる事が出来ると云う事が羨ましかったのだ。
私は私の全てを預けても良い程に想いを焦がせているモノが無かった。学業にも仕事にも趣味にもソレは見出せていなかった。だけど…。人を愛する事を知ったあの日。私にも焦がれるモノがある事を知った。この身を焦がす程の想いがある事を知ってしまった。
要塞都市東京。西街区。更に西にある施設で私は殺し合いに参加している。生き残れたのなら、どの様な願い事も叶えてくれると聞いた。
理想の恋人が欲しい。馬鹿げた願いだと思うだろうか?では貴方達は理想とした恋人と共に歩めているのだろうか?容姿も性格も仕草も声色も総て理想通りの恋人に巡り会えているのだろうか?
答えはNOだと私は思う。
そんな事を考えながら私は歩みを進めていた。施設より更に西へと向かう。昆虫タイプの欲獣の巣があると聞いたからだ。【咎】の精度を上げなければ、生き残れはしないだろうから…。
拓けた場所へと辿り着くと、ブゥンブゥンと音が聞こえた。ソレは何十匹と空を舞っている。
アレは蛾なのだろうか?
ソレとも蝶なのだろうか?
外骨格の構造。頭・胸・腹の三つの部分に分かれている。頭部は人面で胸部からは手足が生えている。腹部からは腸が垂れ下がっている。羽根には大きな眼が付いており、ソレは時折、瞬きする。
どうやら番で行動しているらしく二匹の動きは連携していた。鮮やかな彩りの種。毛深く毒々しい種。形は似てはいるが、細部の構造が違うらしい。
蛾なのか蝶なのかは解らなかった。
そもそも明確な区別は無いとも聞いた事がある。区別している国もあれば区別しない国もあると云う。姿形が似ているのだから…。専門家でも無い限り、その区別は出来ないのだろうとも思う。
【あぁ。そうか…。知識がないのなら、ただ視ただけでは何も解らないのか。】
【モス・イントゥ・フレイム】
私は【咎】の名を呼んだ。




