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其々の想い。


 まぁ。彼奴あいつに勝てるとしたら…。あたしぐらいしかいないんじゃないの?マジで。


 殺し合いが終わり、散り散りとなった咎人達は、其々の想いを抱えていた。


 今は亡き想い人を蘇らせようとしている者。自身が望む純粋な理想の恋人を求める者。完全なる規律での統治を望む者。そして…。本能の儘にただ生きようとしている者。其々の想いをぜにし運命の車輪は廻る。


 光化学スモッグで覆われた空からは鈍色の光が降り注ぐ中、闘技場から二人の影が会話をしながら出てきていた。


 一人は精巧な球体人形の様な可愛らしい少女であった。艶やかな黒髪は肩にかかるか、かからないかのラインで緩やかな形を描き、うなじから耳にかけて少しずつ長くなっていて、前髪は眉のラインで切り揃えてある。その髪型は、この少女を一層と精巧な球体人形に見せている。


 もう一人はスラリと背が高くモデルの様な容姿で知的な雰囲気を纏っている女性がいた。目深に被った黒いオーバーフィットボールキャップから覗くアンダーリムの眼鏡越しの瞳は鋭かった。サラリと伸びた黒髪が風に靡きキラキラと光を放っている。


 「あのさ。観たいって頼んできたの…。【アマノ】だったよね…。なのに…。何でスヤスヤ眠ってんの?殆ど観てなかったでしょ?」


 知的な女性は、そう云った。


 「んあ?いやぁ。思ってたよりも退屈と云うか…。そんなに怒るなよ。【リオ】…。」


 球体関節人形は、そう返す。


 「いや…。殺し合いなんて聞いてなかったんですけど…。しかも、退屈って…。」


 「んあ?だって勝つのは【月執明日花】って決まってる様なもんだし…。まぁ。彼奴あいつに勝てるとしたら…。あたしぐらいしかいないんじゃないの?マジで。」


 はぁー。と知的な女性は溜息を吐く。


 「まぁ。【アマノ】の咎【サッド・バット・トゥルー】は…。卑怯と云うか…。えげつないと云うか…。有り得ないと云うか…。あぁ。そうそう。あの子なんでしょ?【アマノ】が一時的に面倒みてた子。」


 「あぁ。彼奴あいつ何気に可愛んだぜ。師匠とか言って懐いてくれたし。」


 「【アマノ】の事を師匠って呼んでたって事は…。あの子も相当の…。」


 知的な女性はソコまで云うと…。ゴホンと態とらしく咳込んだ。


 「んあ?何て?」


 球体関節人形は大きな瞳を一段と大きく開きながら知的な女性を視る。


 「天使みたいな子なんだね。」

 と顔を少し引き攣らせて言葉の続きを並べた。


 「まぁ。彼奴の勝ちって事だからもう観なくても良いや。ソレよりもだ。南に行こうぜ。静岡の方でさ。なんか面白そうな事が起こってるんだってさ。」


 えっ…。球体関節人形に振り回され続けている知的な女性は、またもや顔を引き攣らせる。


 「さぁ。レッツゴーだぁ。」


 ぴょこぴょことスキップをしながら…。【アマノ】は街の外へと走っていく。そして、知的な女性は大きな溜息を吐きながらも、その後を追い掛けていったのだった。


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