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雨宿りの猫と亡くなった妻

作者: 昼月キオリ

仕事の帰り道。

急に雨が降ってきた。

目の前の喫茶店の軒下で雨宿りする。

すぐ隣りに猫が一匹座っていた。

慶「降られちゃったなぁ」

話しかけると猫はゆっくり慶を見る。

首にスカーフが付いていた。

慶「そのスカーフは・・・」

俺が妻にあげた誕生日プレゼントだ。


その瞬間、雨が止む。

すると猫が軒下から飛び出した。

俺は後を追いかけた。

慶「待ってくれ‼︎」

辿り着いたのは古い神社。

見失った猫の代わりに女性の後ろ姿が見えた。

首にスカーフを付けている。

慶「美奈子‼︎」

美奈子「あなた随分痩せたわね」

慶「食欲がなくてな」

美奈子「ダメよちゃんと食べなきゃ」

慶「俺にはもう何もない、頑張れないんだよ」

美奈子は無言のまま神社の裏側へ歩き出す。

慶「おい、どこ行くんだよ!」

美奈子はしゃがんで何かを抱えている。

「みゃー」

慶「子猫?」

美奈子「さっき見つけたのよ、あなた、この子を飼ってくれない?」

慶「でも、俺に動物を育てられるか・・・」

美奈子「大丈夫よ、だってあなたは責任感が強いもの」

「みゃー」

子猫は雨に打たれかなり弱っている。

慶「・・・分かった」

美奈子「ありがとう」

慶は美奈子から子猫を受け取ると両手で抱え、お腹の所で温めた。

子猫は慶の服にしがみ付いている。

美奈子「この子、慶の体温が欲しいのね」

慶「ああ・・・美奈子」

美奈子「なに?」

慶「俺、もう一度頑張るよ」

美奈子「ええ」

慶「この子の名前、ミナにする」

美奈子「ふふ」

慶「何で笑う」

美奈子「あなたって意外と寂しがり屋さんなんだなぁって」

慶「う・・・」

美奈子「私、そろそろ行かなくちゃ」

慶「ああ」

美奈子「野菜もちゃんと食べなきゃダメよ?」

慶「分かってる」



慶「早く帰って温まろうな」

慶が歩き出すとミナが空を見て鳴き出した。

ミナ「みゃ?みゃーみゃー」

慶「どうした?」

そこには綺麗な虹が架かっていた。

慶「ずっと下ばかり見ていて気付かなかったよ、

綺麗だなぁ」

その瞬間、慶の目から涙が一粒溢れた。

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