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7◆帝国史──4兄弟の絆と試練

(;^_^A 予告通り、今回も寄り道過去編…

ノーヴァ「予告?違うな……予言通りだろう?w」

 ◆アウグスタ帝国の歴史 ── 4兄弟の絆と試練



 ── アウグスタ帝国は黄金期を謳歌していた ──






 広大な大陸の中央に位置するこの大国は、豊富な鉱山資源と肥沃な農地に恵まれ、商人たちが四方から集う交易の中心地として栄えていた。宮殿の白亜の壁は陽光を反射し、街路には多様な人種が行き交い、八百万の神々を祀る小さな祠が路地裏にまで点在する。


 王族、宰相、元老院、貴族たちが複雑に絡み合いながら国を治め、強大な軍事力で周辺諸国にその威光を示していた。しかし、その技術と知識は同盟国であるディセント皇国の女帝に依存しており、微妙なバランスの上に成り立つ帝国だった。


 しかし、この繁栄の陰で、いくつかの小さな亀裂が帝国の基盤を揺るがし始めていた。


 先代皇帝の暴政を終わらせたのは、4人の息子たちの固い結束だった。


 皇帝フェブルス・アウグスタは、先代皇帝に似た風貌ながら、その性格は正反対だった。豪胆でおおらか、弟たちを深く信頼し、国政の重要な部分を彼らに委ねていた。


 皇帝フェブルスは玉座の間に立ち、窓から広がる帝都の景色を見下ろしていた。黒髪がわずかに白み始めた鬢は、10年にわたる統治の重責を物語るが、碧眼の輝きは衰えていなかった。


 フェブルスが因縁のある前皇帝が亡くなった35歳を迎えた数年後。


 フェブルスは徐々にジュニアに政務を任せるようになった。マーティンは宰相として、ジョニーは大神官として、ジャックは将軍として、それぞれが次の世代を支える体制が整いつつあった。


 ある春の日、四人の兄弟は幼少期を過ごした離宮の庭に集まった。かつてはベンバー皇帝の恐怖に震えながら密かに会っていた場所で、今では笑い声が響く。


「思い出すか」


 マーティンが苦笑した。


「あの頃、父に見つかったら殺されると本気で思っていた」


 ジョニーは優しく微笑んだ。


「でも、兄上がいつも私たちを守ってくれた。あの時の誓いを、今でも覚えている」


「兄弟は助け合う」


 ジャックが力強く言った。


「それだけだ」


 フェブルスは3人の弟を見つめ、深く頷いた。


「私たちは運命に翻弄されたが、決して折れなかった。この絆が、帝国の礎となった」


 その時、ジュニアが庭に入ってきた。彼の後ろには、テンバの息子を含む若い世代が続いていた。かつて敵対した家系の子孫が、共に帝国の未来を担おうとしている。


「父上、叔父上たち」


 ジュニアが報告した。


「ディセント皇国からの技術使節団が到着しました。新しい鉱山採掘技術の共同開発について、具体的な協議を始められます」


 フェブルスは満足そうに息子を見つめた。過去の亡霊は消え、新たな未来が始まろうとしている。暴君の時代を超え、兄弟の絆で築き上げた帝国は、次の世代へと確かに受け継がれていく。


 彼は直感で感じた。この平和は永遠ではない。新たな試練が必ず訪れるだろう。しかし、アウグスタ家の絆が続く限り、帝国はどんな困難にも立ち向かえる。


 4人の兄弟と、その次の世代。血で血を洗った過去を乗り越え、彼らが築いたものは、単なる帝国ではなく、家族の絆そのものだった。






 *****






 さらに帝国が、オクト小国に攻め入る数年前。






「兄上、セプテン王国の動きが怪しい。活発化しております」


 背後から聞こえた落ち着いた声に、フェブルスは振り返った。


 宰相を務める次弟マーティン・アウグスタが、深夜の執務室に影のように現れた。黒髪碧眼で先代皇后に似た美貌を持つ彼は、闇魔法を使いこなし、帝国中の情報網を掌握していた。羊皮紙の束を手に立っていた。二人はよく似ているが、マーティンの目には常に計算された光が宿っていた。


「またか。あの国は小さな国を滅ぼしすぎた。次は我々か、ディセントか」


 フェブルスはため息をつき、窓辺に立った。


「先月は国境近くの村を襲撃し、先週は我が国の商人を不当に拘束したと報告があった」


「おそらく両方でしょう」


 マーティンの目が冷たく光った。


「孤児院から育てた影の者たちが、セプテンの軍備増強を確認しています」


 三男のジョニー・アウグスタが、静かに部屋に入ってきた。大神官として神殿を統括する彼は、黒髪に緑目、父母両方の特徴を引き継いだ優しい顔立ちをしていた。


「神殿の祈りにも、不穏な気配が漂っています」


 ジョニーは心配そうに言った。


「セプテン王が八百万の神々を冒涜するような発言をしているとの報告も」


「ならば、準備が必要だな」


 4人目の声が響いた。末弟のジャック・アウグスタが、鎧の音もなく現れた。黒髪に空色の瞳 —— 隔世遺伝の証 —— を持つ辺境公爵は、帝国最強の将軍だった。


「軍のまとめは任せてください」


 ジャックは無造作に髪をかき上げた。


「皇太子派閥の者たちも、外敵の前では一致団結します」


 フェブルスは3人の弟を見渡し、微笑んだ。


「父とは違う。我々は1人ではない」


 重要な決断の前に、フェブルスは必ず1人の女性に相談した。


「ノーヴァ」


 皇帝が小声で呼ぶと、部屋の隅の影が揺らぎ、赤髪銀目の女性が現れた。


 年齢不詳、人々から『隠遁の聖女』と呼ばれる占い師だった。その正体が魔女であることを知るのは、彼女と契約を交わしたフェブルスだけだった。


「セプテン王国の動向について」


 フェブルスは簡潔に述べた。


 ノーヴァの銀色の瞳が微かに光った。彼女は何も触れず、空中に手をかざすと、霧のような映像が浮かび上がった —— セプテン軍の行進、密かな外交工作、そして……帝国内部の裏切り者の影。


「3つの月が満ちる前に、動きます」


 ノーヴァの声は鈴のようだった。


「内通者は……宰相閣下の影の網にかかった小魚です」


 マーティンが満足そうに笑った。


「すでに監視下にあります」


「では、準備を」


 フェブルスはうなずいた。


「だが、戦いは最後の手段だ」






 *****






 一方、皇太子ジュニア・アウグスタは、父や叔父たちとは別の悩みを抱えていた。


 表向き、彼の婚約者候補はギブソン公爵令嬢ファウスティーナが筆頭で、出来レースと思われていた。実際、政略結婚は避けられない運命だった。しかし彼の心は、中立派のムーン侯爵令嬢ユーノに傾いていた。


 宮殿の東翼にある皇太子ジュニア・アウグスタの私室では、政略結婚の話題が持ち上がっていた。


「殿下、ギブソン公爵令嬢との婚約発表は来月にも可能です」


 老練な顧問官が書類を差し出したが、ジュニアはそっけなく手を振った。


「まだ急ぐな。ムーン侯爵令嬢の反応を見たい」


 顧問官は眉をひそめた。


「しかし殿下、侯爵家は中立派で、政治的価値は公爵家に及びません」


「わかっている」


 ジュニアの碧眼が一瞬、陰った。


「だが、あのギブソン公爵令嬢は、父である公爵の操り人形に過ぎない。ムーン侯爵家とは……違う」


 ジュニアの頭の中には、三ヶ月前の舞踏会の光景がよみがえった。


 ユーノ・ムーン侯爵令嬢は、他の貴族令嬢たちとは一線を画していた。政治談義に興味を示し、辺境の貧困問題について鋭い質問を投げかけてきた。彼女の笑顔は、計算されたものではなく、純粋に好奇心から湧き出るものだった。


「叔父たちの教育のおかげで、私は腹黒くなれた」


 ジュニアは独り言のように呟いた。


「だが、時には本心に従いたいとも思う」


「殿下、ムーン侯爵令嬢からの手紙です」


 側近のテンバが密かに手紙を渡す。ジュニアは素早く中身に目を通し、ほのかな笑みを浮かべた。ユーノの言葉はいつも率直で、宮廷の虚飾に染まっていなかった。


「返事は今夜に」


 ジュニアは手紙を胸元にしまった。


「影を使って」


 彼は父の弟たち —— 特に宰相マーティン叔父 —— から様々な教育を受けてきた。神聖力と闇魔法の両方をそこそこ使いこなし、策略の重要性を学んだ。皇帝になるには、腹黒さが必要だと理解していた。


「しかし……」


 ジュニアは窓の外を見つめた。


「叔父たちのように、テンバだけでなく、もっと多くの信頼できる者たちに囲まれたい」






 *****






 季節が巡り、3つの月が満ちようとしていた。


 セプテン王国の動きはますます活発になり、国境付近で小競り合いが発生し始めた。ディセント皇国からは、技術者たちの安全確保を求める声が届いていた。


「兄上、直接会談を申し入れるべきです」


 マーティンが提案した。


「表向きは和平交渉、実態は時間稼ぎと情報収集」


「同意見です」


 ジョニーがうなずいた。


「神殿を通じた非公式の接触も可能でしょう」


 ジャックは腕を組んで言った。


「その間、私は国境の防備を強化します。動物たちも警戒態勢に入れましょう」


 フェブルスは4人で円卓を囲み、最終決定を下した。


「マーティン、交渉の準備を。ジョニー、神殿ルートでの接触を。ジャック、軍の指揮を。私は……ノーヴァにもう1度会い、未来の霧を覗いてもらおう」






 夜、それぞれが自分の役割に就いた。


 マーティンは闇に溶け込み、影の者たちに指令を飛ばした。孤児院から育てた者たちは、今や帝国随一の情報網となっていた。


 ジョニーは神殿の祭壇で祈りを捧げた。神聖力が彼の周りに穏やかな光を放ち、治癒の力が国全体を包み込むかのように広がった。


 ジャックは馬小屋で愛馬のたてがみを梳かしながら、周囲の動物たちに語りかけた。彼の空色の瞳が微かに光り、動物たちがうなずくように頭を下げた。


 ジュニアは自室で、ユーノ侯爵令嬢への返事を書いていた。政略結婚の運命は変えられないが、せめて心のうちだけは偽りたくないと思った。


 そしてフェブルスは、ノーヴァと再び対面していた。


「未来は流動的です」


 ノーヴァの銀目が皇帝を見つめた。


「1つ確かなのは、あなた方兄弟の絆が試される時が来るということ」


「父の時代とは違う」


 フェブルスは静かに言った。


「我々は1人ではない。4人で、そして次の世代と共に、この国を守る」


 霧の中に、いくつもの可能性の光がきらめいた —— 和平の道、戦いの道、裏切りの影、そして信頼の光。


 アウグスタ帝国の新たな物語は、兄弟の絆を軸に、ゆっくりとページをめくり始めた。暴君の時代は終わり、それぞれが己の道を選び取った四人の皇子たちが、今、帝国の未来を担おうとしていた。


 周辺国との駆け引き、内部の陰謀、そして迫りくるセプテン王国の脅威 —— すべてが、この兄弟たちの結束を試す試練となるだろう。


 しかし、彼らは知っていた。


 血よりも濃い絆で結ばれた兄弟が、共に立ち向かう限り、どんな困難も乗り越えられると。






 *****






 ある日、ドアが勢いよく開いた。フードを被った女性が部屋に入ってきた。彼女の出現に衛兵たちは驚いたが、皇帝は手を挙げて制止した。


「ノーヴァ、早いな」


 占い師ノーヴァは軽く会釈した。年齢不詳と言われるが、いつ見ても外見は二十歳前後にしか見えないのが不思議だ。ノーヴァの実際の年齢と正体を知るのは、契約を交わしたフェブルスだけだから。


「森の風が不穏な知らせを運んできました」


「セプテン王国のことか?」


「それだけではありません」


 ノーヴァは窓辺に歩み寄り、遠くの山々を見つめた。


「大地が呻いています。数年のうちに、辺境の地で災害が起こるでしょう」


 皇帝兄弟たちの間には重い沈黙が流れた。






 *****


orz 皇太子の側近と辺境伯の名前?まで出やがった…帝国兄弟と皇太子、いい男たち?を想像しながら書くと楽しい…が誰が主人公が判らなくなる…のでやっと本題に繋がって、ほっ…

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