19◆戦勝パーティ?
orz 構成ミス連続…痛恨の一撃…本来ここで公爵令嬢断罪のはずだったのに、段取りが崩れた…というか悪役令嬢の悪だくみが思ったより楽しすぎて…
◆戦勝祝賀パーティ
── 帝国に侵攻したセプテン騎馬部隊を敗北させ、和平が成立。ついでに塔に攫われたエイプリル・アウグスタ皇女も救い出したが、戦勝祝いの宴とジュリアンが皇太子の婚約候補に名乗りを上げると報せが入った ──
帝国の帝都は、勝利の祝賀に沸き立っていた。
国境での戦いでセプテン王国を撃退し、一時的な和平を勝ち取ったことで、街は祝祭ムードに包まれている。
宮殿では盛大な夜会が開催され、貴族たちは華やかな衣装に身を包み、勝利を祝い合っていた。
その中心にいたのは、帝国の将軍ジャック・アウグスタと、彼の養女デュリサだ。
デュリサは、銀色に輝く髪と、異色の瞳を持つ12歳の少女。今夜は養父ジャックのパートナーとして、淡い青のドレスに身を包み、大人びた佇まいを見せていた。
彼女の周りには、皇帝フェブルス・アウグスタ、宰相マーティン・アウグスタ、大神官ジョニー・アウグスタ、そして皇女エイプリル・アウグスタらが集い、楽しく会話を交わしていた。
「デュリサ、其方の機転がなければ、エイプリルを無事に救えなかったかもしれぬ」
皇帝フェブルスは深い碧眼で少女を見下ろしながら言う。
「だからと言って、ジャックの養女としてだけでなく、帝国の功労者としてこの場にいる立場を忘れるな」
デュリサは軽くうなずいた。前世の記憶を秘密にしなければならない重圧を感じながらも、礼儀正しく振る舞おうと努力していた。異世界で、異端、魔女、と呼ばれ、搾取されることを恐れる彼女にとって、このような場にいること自体が危険をはらんでいたからだ。
《心配するな、デュリサ。お前の因果応報の力は、悪意ある者たちを必ず裁くだろう》
デュリサは内心で感謝を伝えた。毒が効かない体質や、1度見た動きを完璧に再現できる能力、未来を予知する力 —— これらすべても『悪魔』扱いされる可能性があるのだから。養父ジャックの庇護がなければ、彼女の運命はどうなっていただろうか。
(それはわかってるから、いいんだけどさ……くっそ。コルセットなんて背骨や肋骨が変形しそうなもの、誰が考えたんだよ。メイに一応遠慮して絞めてくれって頼んだけど、まだ少し苦しいぞ、これ。
いつかコルセットの必要がないドレスを考案してやる)
《ははは……なるほど。先ほどから不機嫌そうな気持でいるのは、それのせいでもあったか。確かに人間とはおかしなものを発明するものよな》
(う~む……今ほど、身体のないデュークロードを羨ましいと思ったことはないよ)
こんな風に皇族の一員として混ざっているデュリサが、そんな場違いな考えとは関係なく、いい意味でも悪い意味でも注目されているのは間違いないのだろう。
「あの子が噂の……」
「将軍様の養女だってね」
「銀髪に異色瞳……まるでおとぎ話の登場人物のよう」
ささやきは、蜂蜜のように甘ったるく、毒針のように鋭い。
デュリサは内心でため息をついた。前世の記憶を持つ彼女にとって、このような社交界の駆け引きは、退屈なビジネスパーティと大差ない。ただ、今の彼女の身体は12歳。無邪気な少女を演じるには、少々気苦労に対する負担が多すぎるのだ。
「退屈ですか、デュリサ様?」
近くに立つ侍女メイが、心配そうに小声で尋ねた。
「大丈夫だよ、メイ姉。コルセットは慣れないから確かに苦しいけどね、あはは。ただ……あのグループがまたこっちを見ているのが、気になっただけ」
デュリサの視線の先には、皇太子ジュニアの婚約者候補たちが集まっていた。
紫髪のファウスティーナ・ギブソン公爵令嬢、桃色髪のユーノ・ムーン侯爵令嬢、そしてファウスティーナの取り巻きの、青髪のラスティナ・ワクシング子爵令嬢と、茶髪のサンディ・ニュウ男爵令嬢。彼女たちの目には、隠しようもない敵意が光って見える。
そんな中、場内に緊張が走った。司祭が中央に進み出て、宣言したせいだ。
「皇帝陛下、ならびにご列席の皆様にご報告いたします。
神龍の巫女として予言されし者 —— 元オクト王国の王女、ジュリアン・オクト嬢が、新たに皇太子ジュニア・アウグスタ殿下の婚約者候補として加わられます」
金髪に琥珀色の瞳を持つジュリアンが、優雅に一礼した。彼女の目には野心の光が宿って見える。敗戦で祖国を失い、帝国での地位を確固たるものにしたい —— そんな思いが、彼女の振る舞いから滲み出てくるように感じる。
パーティは続き、ダンスが始まった。
皇太子ジュニアとファウスティーナのファーストダンスで幕を開け、その後、皇太子は次々と婚約者候補たちと踊った。一途に皇太子を慕うユーノ、数合わせだと言われる橙髪黒目のフルール・ウォング伯爵令嬢、そして新たに加わったジュリアン。
しかし、デュリサは鋭い観察眼で気づいた。皇太子がデュリサに興味を示すたび、婚約者候補たちの目に嫉妬の色が浮かぶのを。特にファウスティーナの視線は冷たく、デュリサに向けられるたびに棘を含んでくる。
「あの銀髪の小娘が……叔父様であるジャック将軍の傍にいるなんて」
ファウスティーナが扇子で口元を隠し、取り巻きの令嬢たちに囁いた。
「何とかしなければなりませんわ。ジュニア様までもが、あの子に興味を持ち始めたらしいのですもの」
ユーノが、桃色の瞳を潤ませながら付け加えた。彼女は皇太子一筋で、妃教育も優秀にこなす才媛だが、その一途さが時に危険な方向へ向かうこともあるようだ。
しかし彼女たちの会話は、デュリサの心を読む能力によって、筒抜けなのだが。デュリサは内心で首を振る。大人の女たちが、12歳の少女に嫉妬するなんて……前世の記憶があればこそ、この滑稽さがよくわかる。
(ギブソン嬢、父上でもあるジャック将軍に密かな想いを抱いているのか)
デュリサは心の中で分析した。
(そして、ジャックの養女となった私を邪魔者だと思っているようだな)
休憩時間、ファウスティーナが優雅に近づいてきた。
「デュリサ様、お初にお目にかかりますわね。将軍様の養女になってから、ずっとお会いしたいと思っておりましたのよ」
その笑顔は淑女として完璧だが、心の中は悪意に満ちているようだな。おまけに同じ公爵令嬢だからって、いきなり名前呼びかよ。まあ百歩譲ってアウグスタ姓は重なるからいいけど、とデュリサは受け取った。
『この小娘に、あの特製のブドウジュースを飲ませてやるわ……毒は効きにくいと聞いているけど、これは特別な毒なのよ。数十分後に発作を起こす薬。公衆の面前で醜態を晒させてやるわ』
「ギブソン公爵令嬢、ご挨拶ありがとう存じます」
デュリサは無邪気な笑顔で応えた。未来予知の能力が、ほんの一瞬、ブドウジュースの入ったグラスから自分に向けられる光景を映し出した。
計画は巧妙なようだ。給仕係に賄賂が渡され、デュリサのグラスだけが特別なものに入れ替えられる。ファウスティーナ自らがグラスを手渡す。
「勝利を祝して、一杯いかがでしょうか? まだワインは飲めない年齢だとお聞きしますので、ブドウジュースですけれど」
「これは……とても美味しそうなブドウジュースですね。ありがとう存じます」
デュリサは迷わずグラスを受け取ると、中身を一口飲み干した。ファウスティーナの心の中に勝利の笑みが広がる。
『見てなさいよ、ふふふ……数十分後が楽しみだわ……』
しかし、時間は過ぎても、デュリサには何の変化も現れなかった。彼女は平然と会話を続け、時折、大神官であり第二皇弟のジョニーと笑い合ったりしている。ファウスティーナの表情に微かな動揺が走った。
『どうしてなのよ? あの毒は確実に効いているはず……』
デュリサは内心でほくそ笑んだ。『毒物が一切効かない』体質は、神龍の加護によるもの。ファウスティーナが用意できる程度の毒など、彼女の身体には砂糖水同然なのだから。
「デュリサ、何かおかしなことでも?」
ジョニーが尋ねてきた。
「いいえ、何でもありません。ただ……ギブソン嬢が私のことをとても心配してくださっているようで、こう……胸の辺りがなんだかほんわかと温かい気持ちになりました」
デュリサの言葉に、ファウスティーナはぎくりとした。まるで自分の企みを見透かされているかのようだと。
その時、ユーノが近づいてきた。
「デュリサ公爵令嬢、実はお願いがあるのです」
彼女の目には涙が光っている。
「皇太子殿下が、デュリサ嬢にばかり興味をお持ちで……私は、私はどうすればいいのか……」
その訴えは、ジャックの耳にも届くように計算されていた。
ジャックは黒髪をなでつけながら、ため息をついた。
「ムーン嬢、デュリサはまだ12歳です。皇太子が彼女に興味を持ったとしても、それは年の離れた妹に対するみたいなものか、好奇心以上のものはないでしょう」
「でも、でも……」
ユーノは王太子妃教育は進んでいるはずだが、淑女らしくなく今にも泣きそうだ。
デュリサは内心で複雑な思いしかない。皇太子が自分に興味を持っているのは確かだが、それは彼女の『不思議な力』に対する関心だけであり、年下過ぎる上に、ましてや決して恋愛感情などではないと。しかし、それらを説明しても、嫉妬に駆られた令嬢たちには理解されないだろうなと。
その時、ファウスティーナが再び動いた。
「ねえ、みなさま。せっかくの夜会ですものねえ。どうでしょうか、デュリサ様も、一曲踊って楽しみませんこと?」
ファウスティーナが甘い笑みを浮かべて近づいてきた。
「将軍閣下の養女にしてもらうくらいなのですから、きっとダンスもお上手なのでしょうねえ?」
彼女の目には悪意がきらめいている。デュリサが田舎出身で、宮廷ダンスを知らないだろうと踏んでの挑発なのだろう。
周囲の視線が集まる。断れば無教養と嘲笑され、承諾すれば未熟な踊りを晒すことになる。完璧に罠だろう。
しかし、デュリサはただ微笑んだ。周囲の目が集まる中、デュリサを逃れられない状況に追い込んだようだが、一度見た動きを完璧に再現できる能力 —— 剣技だけでなく、ダンスにもそれは通用するのだから。
「お言葉に甘えます。父上、相手をお願いできますか?」
「光栄だな。娘をエスコートできただけでなく、ダンスの相手までしてもらえるとは」
ジャックは優雅に手を差し伸べてくれた。
音楽が流れ始めた。それは宮廷で最も難易度の高いダンスの1つのようだ。ファウスティーナは扇子の後ろで笑みを浮かべた。
『これで終わりよ』
「む? ……おい、誰がこの曲を」
ジャックは王族の教養として各種ダンスを一応網羅してはいたが、公の場でのダンスは、姪のエイプリルと親戚のファウスティーナの誕生日以外ほとんどないため、高難易度の曲に焦ったのだ。
「父上。私は大丈夫ですから」
そう、しかしデュリサは、周囲で踊る夫妻や婚約者同士のダンスや動きをざっと見て、手本となりそうなカップルの動きを瞬時に見極めた。
デュリサは平静を装い、ジャックに手を差し伸べた。
それから余裕で、養父と踊れるのが楽しくて仕方ないと動き始める。そこでデュリサは、驚異的な能力を発揮して見せた。
ジャックのわずかな視線の動き、足の向き、筋肉の緊張 —— すべてを読み取り、先回りして動く。彼女はリードされるどころか、ジャックを完璧にリードし、2人のダンスは見事な調和を生み出した。
「すごい……」
エイプリル皇女が息を呑んだ。
「あの複雑なステップを……確かジャック叔父様は公の場ではほとんどダンスを見せたことがなかったのに……ではデュリサは、もしかして見よう見真似だけで?」
2人の踊りは、見る者すべてを魅了していた。銀髪が光の中を舞い、異色の瞳が時折きらめく。まるで長年一緒に踊ってきたパートナーであるかのように。
『どうして……?』
ファウスティーナの顔から血の気が引いていた。
《時間すら超越する我々の加護があれば、この程度のことは容易いことなんだよなあ。まあ、お主の能力は、単なる模倣を超えているようだがな》
(ん? まあ、父上の剣を受け止める稽古に比べたら、断然楽っちゃ、楽だからね)
《くっくっくっ。大したやつだよ、お主は》
踊りが終わると、盛大な拍手が起こった。皇帝フェブルスでさえ、感心したように頷いている。
「見事だ。ジャック、お前の養女は本当に非凡な子だな」
「陛下、過分なお言葉です」
ジャックは誇らしげに答えた。
ファウスティーナは悔しさに唇を噛みしめるしかなかった。ユーノも嫉妬に顔を歪めそうだ。他の令嬢たちも、それぞれ複雑な表情を浮かべている。
その中で、フルールだけが、冷静に状況を観察していた。表向きはファウスティーナの取り巻きとして媚を売り、ただの数合わせで出来レースなのだと、敵対関係にない態度で接しているが、実は皇帝派閥の情報屋だったのだから。彼女は密かにメモを取る。
『ファウスティーナ・ギブソン公爵令嬢、毒薬使用の証拠追加。給仕係への賄賂、確認済み』
次に、皇太子ジュニアがデュリサを誘ってきた。そこでもファウスティーナとも踊っていた難しいステップを、デュリサは見よう見まねで完璧に再現して見せた。未来予知能力が自然に働き、次の動きを事前に把握できたおかげでもある。
「君は本当に不思議だな」
ジュニアは感心したように言ってきた。
「まるで僕の動きをすべてわかっているかのようだ」
「単に観察力が優れているだけですよ、殿下」
デュリサは控えめに答えた。
しかし、その光景は婚約者候補たちの嫉妬に油を注いだようだ。特にファウスティーナの目を冷たい決意に変えた。
金髪のジュリアンも、遠くからこの光景を眺めていた。琥珀色の瞳に野心が燃える。
『デュリサ・アウグスタ……あなたが邪魔なのよ。皇太子妃の座は私のものよ。いいえ、もっと高い地位を……』
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orz また1回で終われなかった…どうなってるノーヴァ
ノーヴァ「私の出番がないからだよw」




