3話 家族
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名前:シズハ
スキル:『クイズ』『鑑定』『イカロスの翼』
演繹:――
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要素は【名前】【スキル】【演繹】で構成されている。
『演繹』は前提条件から結論を導き出すことだが、ここに何が表示されるのかは分からない。
表示されると思っていた、HPやMP、その他のステータスなどはないらしい。
また鑑定したい対象は心で唱えることで、変更できるらしい。
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スキル:クイズ
効果:クイズを答えることによって、答えたクイズに関する『スキル』を獲得できます。
演繹:回数制限はなさそうです。
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試しに『クイズ』を鑑定してみたところ、人を鑑定した時とは違う要素が表示された。
演繹は少し追加の情報(『鑑定』の主観的意見)が表示される?
というか、回数制限が無いってことはスキル獲得し放題なのでは?
異世界転生には本当にチート能力というものがもらえるのかもしれない・・・
とりあえず、もう二つのスキルの詳細も見てみよう。
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スキル:鑑定
効果:様々な人物・スキル・物質・概念などの情報を確認することができます。
演繹:どうぞよろしくお願いいたします。
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じ、自我があるのか。
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スキル:イカロスの翼
効果:蝋で固めた翼を使用し、空中を移動することができます。
演繹:火や熱に弱く、溶けてしまう危険性があります。
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こちらは予想通りである。
取り敢えず、自分の能力が異常であることが分かった。
異常な能力は幸福だけを持ち込まない。
必ず幸福以上の不幸を運んでくるだろう。
私は心が沈んでいくのを感じた。
ハッと顔を上げると、両親が心配そうにこちらを見ていた。
神託を受けてから、スキルの確認を終了するまで小一時間。
目を開けたり閉じたり、文字を追いかけ目線だけが動く様子をずっと眺めていたのだろうか?
恥ずかしさや嬉しさで顔が少し赤くなる。
「シズちゃん、神託は受けることができた?」
母のマリーエが尋ねる。
「うん・・」
私はその質問に俯いてしまう。
この異常なスキルについて何と説明すればいいか悩んでいた。
「心配するな。どんなスキルを与えられようとも、たとえスキルが与えられなくても、お前は俺たちの大事な娘だ。シズハ。」
父・ルイスの言葉に顔をあげる。
両親は優しい顔で微笑んでくれる。
私は神託でいただいたスキルについて話す決意をする。
その後、30分かけてスキルを説明する。
「それは、何というか、めちゃくちゃだな・・」
「そうね・・でも・・
ねぇシズちゃん、私たちイカロスなんて聞いたことないし、鑑定だって答えとして分からなかったわ。そもそも問題文も分からない言葉だらけ。どうしてシズちゃんは知っていたの?」
母は自分よりも、私に膨大な知識があることに気がついたようだ。
私はゆっくりとまぶたを閉じる。
うん、今なら言える気がする。
「お母さん、お父さん、私ハイパーサイメシアなんだ――――――――
超記憶症候群であること、全て覚えることができるが忘れたいことも全て覚えてしまうことを、両親に明かした。
異世界から転生してきたことは、言えなかった。
「そうだったのか・・」
「今まで隠していてごめんなさい・・」
沈黙が流れる。
そんな気まずい雰囲気を断ち切るように母は「ぱんっ」と手を叩いた。
「シズちゃん、私が最初にシズちゃんにかけた言葉も覚えてるの?」
「私が最初に聞いたのは、お母さんの子守唄だよ。」
「す、すごいな・・じゃ、じゃあ俺は?俺が最初にかけた言葉は何だ!?」
「ふふっ、お父さんは最初の頃はずっと、かわいいなぁ、しか言わなかったじゃない。」
「うふふ、確かにずっと言っていたわ。」
部屋中に笑い声が響き渡る。
どうやら、家族は私のこの異常な暗記力もスキルも受け入れてくれたらしい。
私は空間いっぱいの幸せを感じていた。