9話 かぐや姫
「いまは昔、竹取の翁といふもの有けり。 野山にまじりて竹を取りつつ、よろづの事に使ひけり」
誰もが一度は聞いたことがあるだろう。
日本最古の物語、『竹取物語』の始まりの文だ。
『竹取物語』では、「光る竹からかぐや姫を取り出した翁がお金持ちになり、なんやかんやあって、かぐや姫は月に帰ってしまう」という印象が強いだろう。
しかし、私にしてみれば、なんやかんやの方がとっても印象に残っている。
どうしてこんなことを思っているのか。
それは少し時を遡る――――――――
昨日はカノがスキルも10個も覚えてしまった。
このままでは彼女に置いていかれる。
焦った私は、今日一日『クイズ』を使いまくろう、と意欲を燃やしていた。
いつも通り「Quiz」ボタンを押す。
《5人の貴公子に求婚され、難題を与え、その解決者と結婚すると宣言した人物は誰であるか?》
このクイズはおかしかった。
答えは「かぐや姫」であるが、これを答えにする問題であれば、普通は「光る竹」「翁」などが文に入っているはずだ。
この問題文のシーンは比較的、マイナーなシーンであると思うから。
私は『竹取物語』の中でも問題文に書かれたシーンが一番印象的であった。
かぐや姫は5人の貴公子に求婚されたが、結婚はしたくなかった。
そこで、叶えることができないだろう難題を5人に押し付けてこう言うのだ。
「この難題を解決した人物と結婚しましょう」
だが私はこのシーンについて、本当に結婚したくなかっただけなのかと疑問を持っていた。
例えば、結婚できない人物を好きになってしまったのではないか?
翁(お爺さん)を好きになっていたのであれば、十分あり得る話である。
このような疑問を思い出しながらも私は答えた。
「かぐや姫」
すると、流れてきたメッセージはいつもと違った。
《正解です。スキルクエスト『かぐや姫』を開始します。》
――――――――――――
時は戻り、現在、私はいつの間にかウィンドウに現れていた地図を見ていた。
地図上部の中心には丘の絵、丘の東西には村の絵が描かれている。
丘の絵には、何故か私とカノが名付けた『再会の丘』と書かれていた。
そして丘の南には大きな森が描かれており、森の中に5つの光る点がある。
5つ・・・
5人の求婚者と同じ数だ。
私は少し興奮しているのを感じた。
自分の知らない物語が待っているかもしれない。
明日、カノに同行してくれるか聞いてみよう。
そう思いながら家に帰るのであった。




