13 イザナム妃とマゼンダ妃 ~エランダ乱入!~
危険な空気が漂い始めた引見の間。(親族のみが入れる部屋)
そこへやってきたのはカインの見合い相手――病気(仮病)で倒れたはずの――
あの時は――侍女を部屋へ連れ込んだわけではないと言いたかった。侍女がいたのは俺の部屋の清掃のためだと。
しかし、普通、侍女が部屋を清掃する時は主である俺がいない時だ。それを許して部屋にいたのは……やはり……。
何も言い返せない俺に、「――ハッ」吐き捨てるようなイザナム妃のため息が聞こえた。
そして「フフ」マゼンダ妃の笑む声も耳へと届く。
「私としては早くカインさんも妻を得て一人前の公爵家の男となって欲しいと思いました。
それで、たとえ遥か身分の低い令嬢が相手でも縁談には口を挟まないようにと思いましたがこれでは口を挟まざるを得ませんわ。
エランダ嬢の御病気に気が付かなかったのではなく、カインさんは本心では他の女を――フレーテスム宮の侍女に心を奪われていたから気が回らなかったのではございませんか?」
「いえ、そのようなことは」
「どうかしら。またコソコソと侍女と逢引きでもなさっているのではないかと私は心配なのです」
――と、その時だった。
「待て! ここは入ってはならぬ!」
俺の側近ケットナーのけたたましい声。それと一度聞いたら忘れにくい、女性の、悲鳴混じりな叫び声が扉の外から聞こえてきた。
「ケットナー様! どいて下さい!」
「どくどかぬの話ではない! 私がどいてもこの部屋は決して誰も入れぬのだ!」
何やらの喧噪。
扉の外でケットナーと女性が押し問答をしているようだ。
だが、
「入れない事などありますか! ドアノブを捻れば誰でも入れます!」
「誰がさようなトンチを――いや、だから、オイ、待て!!」
騒動の声の後、突然――バァン――ッ!
激しい音を立て、現在、身内以外は立ち入ってはいけない【引見の間】に現れたのは、
「私はハロルド州の駐留軍指揮、ミンス家が長女! エランダ・ミンスと申します!」
紛れもなく、俺と見合いをした、あのミンス家の息女エランダ嬢だった。
彼女は亜麻色の髪をなびかせ、堂々と部屋へ押し入ってくるが、
「無礼であろう! 出てゆけ! 早く誰か摘まみだせ!」
エランダ嬢の登場にいち早く叫んだのはマゼンダ妃だった。
しかし、亜麻色の髪の令嬢は、
「礼儀知らずはどちらですか!!」
彼女、エランダは――他でもない、あの恐ろしいマゼンダ妃の言葉を跳ね返すように足音を立ててみせた。
「なに?」と、マゼンダ妃はもちろんのこと、表情を崩さないイザナム妃も眉間に眉根を寄せて、彼女を見据える。
マゼンダ妃はヅカヅカ入り込んでくるエランダ嬢を迎え撃つかのように立ち上がり、
「そなたは知らぬと見えるが。妾は伯爵家、アルギス伯閣下が内儀、マゼンダである。そしてここは身内の者のみ立ち入ることが許される引見の間だ。妾たちが無礼とはどういう了見か」
「この部屋がどういった部屋かなどと存じません! しかし、あの振る舞いはミンス家の長女として許せません! ゆえにミンスを代表し、御親族へ苦情に参りました!」
「あの振る舞い、とな?」
マゼンダ妃の後ろで、成り行きを見守っていたイザナム妃がエランダ嬢に訊ねた。
「面白い。ミンス家のエランダ嬢よ。マゼンダに代わり、妾――虞群公淑主イザナムが耳を貸すゆえ答えてみせよ」
――その言葉に俺の心臓が凍り付く。
お読みいただきありがとうございます
おもしろそう、続きが気になる、となりましたら是非ブックマーク、評価ポイントの方もよろしくお願いいたします。




