魔術と魔法の違い
魔術という呼び名がある。魔法と呼んだりもする。
では魔術と魔法はいったい何が違うのだろうか。
師匠が言うには魔術は「単体」、魔法は「全体」として考えると分かりやすいだろとのことだ。
魔術は文字の通り「術」である。「術」には、すべ、方法、手立て、技といった意味がある。「術」が指す範囲は比較的小さく、ひとつの技術や作業内容といった単位ごとの細かな内容を指している。
それに対して魔法とは文字の通り「法」である。「法」には、法則、決まりごと、規則、そして大局的には摂理といった意味がある。「法」が指す範囲は極めて広く、物事の法則性から出来事の始まりから終りに至るまでの全体を指す言葉である。
「1+1=2」という数式で説明しよう。
答えを導き出すための各数字や記号である「1」「+」「1」「=」が魔術に相当する。
そして答えである「2」までを含んだ「1+1=2」が魔法に相当するという訳だ。
つまり「魔術」とは結果を導き出すためのそれぞれの工程や技術を指す言葉であり「魔法」とは各工程から結果に至るまでの全てを含んだ言葉であるということだ。
しかし師匠は魔術と魔法を明確に分けることは難しいとも言っていた。
それはひとつの魔術で結果まで出せてしまう場合があるからだと。
魔術を使った瞬間に結果まで出てしまったのでは、それはもはや魔法と同義だ。その魔術は魔法でもあると言えてしまう。
工程と結果の曖昧さが区分けを難しくしているとのことだ。
かくいう師匠も会話の中で魔術と魔法を混同して使っている場合が多々あった。
そのことを指摘すると顔を赤くして怒り、殴る蹴る噛みつくといった仕返しをよくされたものだ。
今にして思えば実に楽しいじゃれあいだった。