グイグイ私に近寄って来る、この男は私が嫌がっているのが分からないのか?
日本女性とは? “笑顔や愛想を振りまくモノ。”
どんな男性にも優しく、笑顔で受け答えをしなくてはならない!
そんな“暗黙の了解”みたいなモノを幼い頃から私は母から教え
込まれていたように感じる。
・・・だからなのか? 嫌いな男性が私に近づいてきたとしても、
嫌な顔一つせず、会話をする事が【礼儀】だと思い込んでいた。
ただこれをすると? 男性側は完全に勘違いするというか?
“私がその男性に気があるように見えるらしい。”
だからグイグイ私に近づいて、私の肌に触ってきたり抱きつこうと
する男性もいた。
私の仕事は、“高級クラブのホステスの仕事をしている。”
お店に来るお客様は“神様”として見ており、大切に接客をする。
『いらっしゃいませ~』
『伊央亜いる?』
『あぁ、上杉様! 伊央亜をご指名ですか?』
『勿論、直ぐにワタシの席に呼んでくれ!』
『はい、畏まりました! 伊央亜、上杉様が3番テーブルでお待ちよ。』
『分かりました、直ぐに行きます!』
*
『おうおう、伊央亜! ワタシの隣に座りなさい!』
『はい、上杉様! 今日はお早い時間に来られたんですね?』
『仕事が上手くいってね! だから早く伊央亜に会いたかったんだよ。』
『とても嬉しいです!』
『そうかそうか、さあさあ、何でも飲んでいいぞー!』
『お店で一番高いシャンパンを入れてもいいですか?』
『勿論、それで乾杯しよう!』
『まあ、嬉しい!』
『よしよし!』
上杉様、某有名な会社の取締役。
今回の仕事で何百億のお金を動かす仕事が成功したらしい!
この日、やたらと機嫌がよくお店で一番高いシャンパンを入れてもらった。
お店のお客様としては最高のお客様なのだが、、、。
やたらと私に近寄り体を舐めるように見ては私の太ももに手をやり
触ってくるのだ!
こういう高級クラブでは、“お触り禁止”と決まってるのに、、、!
お酒を飲んで気が大きくなっているのか?
この男は私にやりたい放題!
流石にお店のママに頼んで注意してもらうと、、、?
『ママ! ワタシはお金を払ってんだぞ! ワタシが誰に何をしようと
関係ないだろうが! 口を挟むな!』
『まあまあ、上杉様! 随分と酔っぱらっていらっしゃるんですか?
今日はもうお帰りになられた方がいいのでは?』
『まだ伊央亜と飲んでるだろうが!』
『それ以上、大声を出さないでください! 他のお客様にご迷惑が
かかりますよ。』
『うるさい! ワタシに注意するのはワタシの母親だけだ! 黙れ!』
【パンパン】
お店のママが手を叩き、黒服の男を数人呼ぶ音。
『上杉様をお家までお送りして!』
『分かりました、上杉様、さあさあ! 行きましょう!』
『ワタシはまだ帰らん! 伊央亜もママに何か言ってくれ!』
『今日はもうお帰り下さい、上杉様。』
『・・・い、伊央亜、』
『上杉様、ちゃんと自分の足で歩いてください!』
『うるさい! 黙れ! そんなのは分かってる!』
*
『やっと、帰ってくれたわねぇ~』
『はい、ママ! スミマセン、ご迷惑をかけて......。』
『いいのよ、伊央亜ちゃんのせいじゃないわ! でも上杉様、もう
お店に出入り禁止にした方がいいのかしらね?』
『私もその方がいいと思います。』
『・・・伊央亜ちゃん、随分我慢したわね! 上杉様、伊央亜ちゃんには
やりたい放題だものね!』
『“私、実はもう限界でした。”』
『あぁ、そうだったのね! 分かったわ、上杉様はもう出入り禁止に
します! 皆さんもそれでいいですね!』
【はい!】
・・・あれからあのお客様は、“出入り禁止”でお店に来れなくなった。
今頃、他のお店に行っているのかな?
私と会う事は二度となくなった。
年配の男性だったからなのか? 私が本気で嫌がっていた事を
全く知らないまま会わなくなる!
私は今でもあの男性の事を考えたり頭に浮かんだりするだけで吐き気がする。
私は完全にあの男性を受け付けなくなっていたのだ!
あの声やあの時の顔、あの男の汚い手で私の体に触る感触。
考えただけで今でもゾッとする。
・・・ただ、こういう仕事をしていると?
あの男に、似たような男性がお店に来るようになる。
私は吐き気と闘いながらお客様に愛想笑いとバレないように笑顔を絶やさない。
私は高級クラブのホステス! プロ意識は人一倍ある方だと思う!
私は負けない! やるからにはお客様に楽しんで帰ってもらう事が一番だと
思っているからだ。
今日も私は一日、高級クラブで可憐な蝶のように舞う。
『また伊央亜ちゃんに会いに来ていいかな?』
『勿論、来てください!』
『じゃあーまた!』
『えぇ!?』
『今度、時間があったらかけてきて。』
『・・・あぁ、は、はい、』
『じゃあね!』
『また、いらしてください!』
『楽しかったよ。』
【ガタン】
『これ! ゴミ箱に捨てておいて!』
『えぇ!? 何ですか?』
『今、お客様から貰った連絡先を書いた紙よ。』
『ああ~分かりました、捨てておきます!』
『じゃあ、次のテーブルに行ってくるわね!』
『はい、頑張ってください!』
今日も私は戦う! どんな事があっても私は負けないわ!
最後まで読んでいただいてありがとうございます。




