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ミオ、散髪をする

 それにしても、空気を読め?


 そのあと、ずっとそのことについてかんがえてみたけど結局わからずじまいだった。


 別荘に戻ったけど、サンドロが言った通り朝食までまだ時間がある。


 アマンダに髪を切って欲しいと相談していると、カルデローネ家の使用人の一人が髪を切ることが出来るので切ってあげましょうか、と言ってくれた。


 お願いすることにした。


「ですが、こんなにきれいな髪の毛、本当に切ってしまっていいのですか?」


 その使用人がお世辞を言ってくれた。


「自分で切ったので、ガタガタになっているんです。それに、赤い髪なんておかしいでしょう?」

「そんなことありませんよ。髪質がすごくいいですし、うらやましいくらいです。たしかに、全体的に不揃いですね。どうでしょう。伸ばして後ろで一つにまとめるというのは?今回は、このまま伸ばせばいいように、揃えておく程度にしておきます」


 そうよね。もう少し伸ばして後ろで一つにまとめたっていいかもしれない。


「じゃあ、お願いしていいですか?」


 彼女のアドバイスに従うことにした。


 そして彼女は、手際よく切ってくれた。


 朝食を終えてから身支度を整え、別荘の前に集まった。


 サンドロとクロエ、それからイレームという名の近衛兵とセリアは、残ることになった。


 四人で湖に行くという。サンドロは絵の続きを描くのはわかるけど、後の三人はどうするつもりなんだろう。


「ミオ、髪を切ったのかい?」

「どうして?」


 朝食の間中、皇太子殿下とエドモンドの視線を感じていた。視線が合うと、二人そろって何か言いたそうにはしていた。だけど、口を開くことはなかった。


 みんなが集まるのを待っているとき、二人が尋ねてきた。


 揃えてもらうだけにするつもりが、結局、肩に届かないほど切ってもらった。


 だって、短い方がラクだということを覚えてしまったんですもの。


 一つにまとめてくくる、ということすら面倒くさい。


 ダメだわ。昔は出来ていたことが、いまはもう面倒くさいと感じてしまっている。


 そういえば、あきらかに体にお肉がついているのに、つかなきゃいけないところについていなくって、ついちゃいけないところにしかついていない気がする。


 わたしってば、身も心も男になってしまったのね。


「そうなんです。カルデローネ家の使用人で器用な方がいらっしゃって、切ってもらいました。あまりにもボサボサでしたから。似合っていませんか?」


 二人の前でクルクルと回ってみた。


 自分でも気に入っているんだけど。他人の目から見たら、どうなんだろう。


「似合ってはいるけれど……。きみは、長髪の方が似合うかもしれない……」

「似合っているよ、ミオ。最高だ。その方が、さっぱりしていて感じがいい」


 皇太子殿下にかぶせ、エドモンドが過剰なまでのお世辞を言っててくれた。


 いやだわ。あまりにもお世辞がすぎる。


「エドモンド、おまえなぁ……」

「兄上は、センスがないのです」

「なんだと?軍人のおまえは、ひたすら簡素な髪型を好んでいるだけじゃないか」

「そんなことありませんよ」


 なんかまたはじまったわ。

 この二人、最近どうでもいいことで兄弟ケンカをしているわよね。


「はいはい、お二人ともそこまでです。ミオは、短くても長くても似合う。それでいいでしょう?全員揃いました。出発しましょう」


 リベリオが近づいて来た。


 彼の知的な美形越しに、ミシェルとパオロが笑顔で話をしているのが見える。


 ミシェルの顔色は、ますますよくなっている。よく笑っているし、大丈夫じゃないかしら。


 アントーニ家の別荘に向けて出発である。


 わたしも歩きだそうとしたとき、視線を感じた。そちらをそっとうかがうと、別荘の居間のある窓からロゼッタがのぞいている。


 彼女は、こちらをじっと見つめている。


 そういえば、ここに来て彼女の姿をまともに見たのは、別荘に到着したときだけのような気がする。


 そのときには皇太子殿下にべったりしていたけど、それ以降はそういうことがいまのところはない。わたしにケンカを売って来たり、嫌味や侮蔑の言葉を叩きつけてくることもない。


 静かすぎてかえって不気味である。


 みんなはすでに別荘の門をくぐってしまって姿が見えない。


 意を決して、別荘のエントランスに戻った。


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