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どうにかしなきゃ、よね?

「うわぁっ!いいのですか、宰相閣下?皇太子殿下に花を持たせてくださるなんて、さすがは宰相閣下でございますね」


 内心は絶望的である。だけど、そんなことは表情にださない。態度にもださない。


 ニッコリ笑い、うれしそうな表情を作ってよろこんだふりをして見せた。


 もちろん、宰相を持ち上げる言葉も忘れてはいけない。


「あ、ああ。ああ、もちろんだとも。わたしは、皇太子殿下に立派な皇帝になっていただきたいと、常々切に願っているからな」


 そんなこと、これっぽっちも思っていないくせに。


 銀狐って、髪の色が銀色だからっていう理由だけで呼ばれているわけじゃないのね。


 ほんっと姑息な奴。


「伯父上、つまらない話はもういい。はやく行こう」

「そうだよ。腹が減った」


 そのとき、チビデブ皇子たちが子どもみたいに言いだした。


「ああ、そうそう。トラパーニ国から、第一王子だけでなく第三王子も来るらしいから、それも伝えておこう。では、当日を楽しみにしておくよ」


 宰相は、ニヤリと笑って去って行った。


「なんだって?王子は一人だけじゃないのか?くそっ、その情報を隠していたに違いない。ミオ、あんなことを言って大丈夫なのか?

「申し訳ありません。じつは、全然大丈夫じゃありません。ですが、どうせぼくらがやらなきゃならないんです。見苦しい引き受け方をするより、せめてよろこんでいるように見せかけたかったんです。パオロさん、まだ日にちはあります。とにかく最善を尽くしましょう」

「そうだな。きみがそう言うのだったら、なにかうまい手があるような気がする。こうなったら、ダメでももともとだ」

「パオロさん、その意気です。さあっ、皇太子殿下に報告をして、さっそく対策を煉りましょう」

「ああ」


 わたし、どんどんとんでもないことに足を突っ込んでいないかしら?


 タルキ国の王女だということがバレたら、命がなくなってしまう。だから、ひっそりと隠れていなきゃならない。


 それなのに、仇の国の仇の人のすぐ近くで、わたしはいったい何をやっているの?


 自分でも呆れ返ってしまった。




 人質としてトラパーニ国に行ったお兄様たちは、つぎに行くであろう弟や姉妹の為にそこでの滞在や王族や官僚たちのことをつぶさに観察し、記してくれていた。


 お姉様が人質同然で行くことになった際、そのノートを必死に見ていた。


 もしかすると、お姉様とわたしの行き先が急にかわることになるかもしれない。


 だから、わたしもそのノートを見ていた。



 宰相がぎりぎりまで知らせてくれなかった第三王子がやって来るのは、ある意味ではよかったのかもしれない。


 なぜなら、第一王子より第三王子のほうがはるかに優秀で常識のある人物だからである。


 この皇国での第一から第三王子たちと皇太子殿下のようなものである。


 会談は、第一王子を蔑ろにしない程度に第三王子と話をすればいい。というよりかは、第三王子を通じて第一王子と話し合えばいい。


 問題は、宴である。


 それに出す料理の食材を準備することが、特に困難である。


 それに、宴を動かすメイドたちの問題もある。


 メイドたちは、宰相派が八割強である。


 抜け目のない宰相は、すでにメイドたちにも手をまわしているだろう。


 料理じたいの問題もある。だけど、それをクリアして素晴らしい料理が提供でき、おもてなしをしたい気持ちがあっても、彼女たちの協力がなければなにも出来ない。


 しかし、日頃から彼女たちと交流を心掛けている。最近では、彼女たちの態度がずいぶんと軟化してきている。


 それは、わたしに対してだけではない。アマンダに対してもだし、皇太子殿下やパオロに対してもである。


 もしかすると、協力してくれるかもしれない。


 いずれにしても時間がない。うだうだと思い悩んでいる暇はない。


 どうにかしないと。



『じつは、ぼくはサラボ王国の官僚の馬丁だったのです。あるじは、この皇国でいうところの宰相のような方です。昨年、トラパーニ国の第一王子と第三王子が訪れることになり、その際にいろいろ調べたのです。あるじは野心家です。饗応を自分一人で取り仕切り、成功させようとしていました。そのため、屋敷中の使用人総出で準備をしたわけです。だから、二人のことを多少なりとも知っています。もっとも、そのときにはあちらが急にキャンセルをしてきたため、準備をするだけで終わってしまいました』


 そんな取ってつけたような大嘘をついた。


 それでなければ、わたしの持つ情報の出所の言い訳が立たないからである。







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